井上拓真は18人兄弟の正規王者ウーバーリに勝てるのか?
この試合の勝者は、WBA、IBF世界同級王者の井上尚弥が、英国グラスゴーで2ラウンドに沈めたエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と、元WBC世界同級王者の山中慎介との試合で、体重を超過した“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)の間で行われるWBC世界バンタム級シルバータイトル戦の勝者との指名試合が義務づけられている。 ウーバーリは、「この階級は、ネリやテテ(WBO世界同級王者)などKO率が高くレベルの高いボクサーが揃っていて面白い。今後、ベルトの統一をしていきたいし、この試合は、その最初のステップになる」と4団体統一のプランさえも口にした。 会見の問答の中で報道陣を驚かせたのは、その家族構成である。妻と2歳の娘がいるが、男13人、女5人の18人兄弟の大家族で、ノルディは、13番目の子供。そのほとんどが、ボクシング、キックなどの格闘技をしている格闘一家だ。女兄弟の一人はアマチュアのフランス王者で一番末の弟も最近ボクシングを始めたという。試合には、もう一人の兄が来てセコンドにつく予定。 公開練習の視察に訪れた真吾トレーナーは、「全体的にコンパクトにまとまっているね。ベテランのように感じる」と動きを見た感想を話したが、18人兄弟の情報に食いついた。 「ほんとですか? そこはやられましたね。1ポイント取られた。1ラウンド目からしっかりポイントを取って試合で取り返さないとまずいですね。兄がセコンドに?家族同士の戦いならなおさら負けられない」 井上家は姉、尚弥、拓真の3兄弟。フランスのビッグダディに1本取られた。 だが、真吾トレーナーの絶妙のジョークの返しの中に真実もあった。サウスポースタイルから、豊富な手数とテンポで前に出てどんどんペースを作ってくるウーバーリに対しては序盤から、そのリズムを乱すことが攻略の一歩なのだ。
元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士さんも「「手数とテンポがウーバーリの特徴。一発はないが、常に動きながら上下に打ち分けて手を出してくる。反応タイプのボクサーだろう。右のフックはガードの上からでも、打ち下ろすような独特の角度で打ってくる。それを受け止めて戦うのか。同じように足を使い、テクニック、スピードで勝負するのか。それとも、強引につっこんでファイターに変わるのか。序盤のテクニックとスピードの競り合いで、不利だと思ったら、作戦を変えること。それも、我慢して続けることが重要でしょう」と言う。 そして飯田氏は、ウーバーリの弱点を指摘した。 「ウーバーリは、完璧に見えるが、左ストレートの打ち終わりに隙が生まれる。テンポが、一瞬、ひとつなくなるのだ。それをバックステップで外すのではなく、前に出て外して攻めたい。それも、一発のカウンターでなく、1、2、3まで連打をまとめたい。そういうボクシングを徹底し我慢して続けると、正規王者のテンポが崩れて流れがくる。それができるかどうか。足が止まったら終わり。厳しい戦いにはなるが、拓真の強みは精神力。そういうファイターのような戦いができると思う」 大橋会長も「顔を見ると結構打たれているんだよね。パンチは当たると思うが、持久戦になる」と見ている。