藤井聡太名人の「勝負おやつ」に選ばれ大復活…名古屋の老舗和菓子店が廃業寸前からV字回復を遂げるまで
■「名古屋を代表するおやつにピッタリ」 事の経緯を説明すると、常連さんと僕とのやりとりが繰り広げられた当日、会場となる万松寺の公式アカウントからDMが届きました。 じつは、万松寺の副住職がネットを見ていて、件のツイートを発見されたのだそう。お寺と店の場所がすぐそばということもあり、数日後には副住職が店まで来てくださいました。話を聞くと、副住職自身も名古屋のご出身で、幼い頃にお母様と一緒にうちのお菓子を召し上がっていたようなのです。 「とてもおいしかった記憶があり、名古屋を代表するおやつにピッタリなので、ぜひ今回の棋聖戦の勝負おやつのメニューに入れたい」と申し出てくださいました。もちろん、断る理由はありません。 結果、同じく大須に店舗を構えている和菓子店・青柳総本家さんの「ケロトッツォ」というお菓子とセットで、「午前のおやつ」メニュー候補10品の中に加えてもらえることになりました。ケロトッツォは、こしあんのカエルまんじゅうに生クリームとクリームチーズをミックスしたクリームがサンドされている、なんともかわいらしいお菓子です。 メニューでは、真ん中にケロトッツォ、その左右に「鯱もなか」を配置。名古屋らしくて、インパクトがあって、愛嬌もある。これはいよいよ本当に選ばれるかもしれないと胸が高鳴ります。 ■情報番組にも取り上げられ、通常の3倍を売り上げる そんな僕の興奮を表すかのように、棋聖戦の数日前から地元名古屋の情報番組は、どのおやつが選ばれるのかという話題で持ち切りになりました。 ただ、どれだけ周りが盛り上がっても、最終的には対局者本人が選ぶもの。選ばれたかどうかの連絡を待つのみです。そして対局当日の朝、朗報が届きました。見事、勝負おやつに「ケロトッツォ&鯱もなか」が選ばれたのです‼ この知らせを受けて、Twitterはお祭り騒ぎ。僕も一緒に喜びのツイートをし続けました。対局の当日、会場周辺には将棋ファンの方々が集まっており、万松寺からの帰り道に、青柳総本家でケロトッツォを購入し、その足で「鯱もなか」を買いに来てくれる人が続出。徒歩20分ほどの距離ですが、大須を観光しがてらたくさんのお客様にご来店いただき、その日の売り上げはいつもの3倍以上を記録しました。 こうして、「将棋タイトル戦の勝負おやつに選ばれた」という肩書きが加わり、「鯱もなか」はまたひとつレベルアップを果たしたのです。 ---------- 古田 憲司(ふるた・けんじ) 「元祖 鯱もなか本店」専務取締役 1984年生まれ。愛知県一宮市出身。バンドマン、フリーター、商社、不動産業など数々の経歴を経て、老舗和菓子屋の4代目を引き継ぐ。著書に『鯱もなかの逆襲』(ワン・パブリッシング)がある。 ----------
「元祖 鯱もなか本店」専務取締役 古田 憲司