川内優輝ら男子ペースメーカーに称賛の声…瀬古リーダー「男子が女子を引っ張るのは悪いことですか」発言は正しいのか
賛否の“否”の意見のひとつは世界でも類をみない女子単独マラソンレースの看板を外したことだ。1984年のロス五輪から女子マラソンは正式競技となった。大阪国際女子マラソンは、その流れを先読みして1982年にスタート。今回で40回目を数えたが、東京五輪も含めて10度の五輪で選考レースのひとつとして位置づけられ、有森裕子さん、高橋尚子さん、野口さんらの五輪メダリストが、この舞台で駆け引きや勝負強さを養った。五輪と世界選手権は、ペースメーカーを置かない女子の単独レース。その大舞台と同じ条件下で開催される大会に意義があった。その点が世界の女子マラソン界から評価されてきた。 大会事務局は、野口さんの記録と今回の記録を併記するという形をとったが、周回コースになったことも含めて従来の条件下とは違う記録を並べることにも問題がある。 尾縣専務理事は、それらの批判の声が、日本陸連に集まっていることは「ない」としながらも「世論では(批判が)伝わってくる」とも認めた。 ただ、瀬古リーダーの問いかけは極論とはいえ、新型コロナ禍という特別な事情を鑑みれば、男子のペースメーカー採用は、むしろ“ヒット“ではなかったか。 東京五輪代表の2人は、世界のスピードがどんなものかを経験することができたし、何しろ、ペースメーカーに起用された田中が、「自分のマラソンをやっているので練習にもなるし、間近で五輪代表選手と一緒に走れるのは凄くいい経験になった。これからの自分の走りに生かしたい」と語ったようにマラソン界全体の底上げにも寄与することができた。 2005年のベルリンで男子のペースメーカーのアシストを受けて日本記録を作った野口さんは、「止まっていた時計がちょっと動きだした。一山選手、前田選手が軸になって世界へ向けての挑戦をやってくれた。これからすぐにでも破られそうな気配はしている。刺激し合いながら世界との距離を縮めて欲しい」と、檄を飛ばしたが、世界から取り残されないための“試み“としては悪くなかっただろう。