「臭わない袋BOS」…子育て中に外出先でおむつ処理に困った思い出、開発担当者「これができたら画期的なものに」と直感
クリロン化成「臭わない袋BOS」
クリロン化成の「臭わない袋BOS」は、袋の口を結ぶと、ほぼ完全に臭いをシャットアウトできるごみ袋だ。医療用の技術から生まれた高い防臭性は、使用済みのおむつの処理に悩む子育て世代を中心に支持を集めている。災害時の避難所生活でも臭いの問題は課題となっており、防災グッズとしても注目されている。(井上絵莉子)
2011年、技術主任の安原綾乃(現・開発営業部課長)は、企業に片っ端から電話をかけ、ある素材の改良版を売り込んでいた。 素材とは、人工肛門(ストーマ)の排せつ物を受け止める専用のパウチ(袋)用に開発した材料。ストーマを持つ人が身につけて生活するため、細菌を通さず、臭いも漏れない優れものだ。
ごみ袋に入れても臭いが漏れてしまう
パウチ以外にも使えないか。そう考えた開発営業部長の栗原和志(現・社長)の下で、安原は商品にしてくれる企業を探した。パウチは昔から手がけていたが、栗原は社員の一人が余った別の防臭性のある素材を持ち帰り、おむつを捨てる袋にしていることを耳にしたのだという。 安原はこの話を聞き、自身も子供2人が幼かった頃、外出先でおむつの処理に困ったことを思い出した。ごみ袋に入れても臭いが漏れてしまうからだ。ペットの便や生ごみも……。日常生活を見渡すと臭いの問題は多い。安原は「これが解決できたら画期的なものになる」と直感した。
「捨てる袋にお金をかける人がいるの?」
耐久性が必要なパウチは厚く、口が結びにくい。一方、薄すぎると破れやすく、防臭性にも響く。改良版は試作を繰り返し、0・02ミリという厚さにたどり着いていた。 だが、思うように進まなかった。ネックとなったのはポリ袋の5倍もする価格。「すごいけど、捨てる袋にお金をかける人がいるの?」と言われ続け、1年が過ぎた。
取り出しやすさにこだわり
「じゃあ、自分たちでやろう」。これまで手がけてきた製品は企業向けばかり。個人用を開発した経験はなかったが、「この素材が埋もれてしまうのはもったいない」という思いが突き動かした。 こだわったのが取り出しやすさだ。おむつを交換する際など、とっさに必要になることも多い。箱の中に台紙を入れ、蛇腹状に袋を詰めることで、最後の1枚まで簡単に取り出せるようにした。