「語られにくいことを扱っていきたい」佐伯ポインティが“本音を自分語りできるコンテンツ”を提供する理由
YouTubeで性愛をテーマにした動画を投稿し、好評を博している佐伯ポインティさん。今年7月からはリスナーから寄せられる幅広い“悩み事”に向き合うポッドキャストをスタートし、今月にその内容をまとめた書籍も発売される予定だ。「まだスポットライトが当たっていないものや、語られにくいことを扱っていきたい」と語る佐伯さんに、第三者に悩みを相談することの効能について聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
「世界はいろんな人がいるから面白い!」あえて“多様な性愛”の動画を投稿する理由
――ポインティさんは、完全会員制の猥談バーをオープンして話題になりました。どういった経緯で始めたのでしょうか。 佐伯ポインティ: 昔から小説家や映画監督になりたいと思ってたんですが、センスがないので諦めて、漫画編集をメインにする小さい会社に入社しました。その会社の社長と作家さんが、雑談で「こんなにエロと自分が好きなやつはいない、自分の会社やったらいいのに」って言ってくれたんですよね。当時まだ若かったので、何が向いているのかわからなかったけど、「見る目がある2人が言うんだから間違いないんだろう」と思って、2人の雑談を信じて即会社を辞めて、個人事業主になりました。 男尊女卑が強いものや暴力的で非日常なものじゃなくて、もっと日常に近くて、ハッピーでユニークでセクシャルなコンテンツがあったらいいのになって思ってたんです。そんな時「1日店長ができるお店をやってみない?」と声をかけてもらって、「猥談バー」を始めました。「出会いの場じゃないのでナンパ・連絡先交換禁止」「個人に興味を向けずに話題に興味を向けてください」とか、いくつかのルールを設けて何度か実施しているうちに、毎回満員になるくらい好評になっていって。そこで、クラウドファンンディングを実施して実店舗化をしたって感じでした。 ――猥談を中心とした動画コンテンツの配信も長く続けていますよね。単なる「猥談」のみではなく、セクシュアリティや、保健体育も含めた基本的な知識も解説しているのはなぜですか。 佐伯ポインティ: 例えば、「アセクシャル(他者に対して性的な欲求を抱かないセクシュアリティ)」に関する動画を出すこともあるんです。普段、猥談をお届けしているチャンネルから、世の中には“性的な惹かれ”を経験しない人もいるんだよって説明することは、すごく大事だと思うんですよね。猥談の動画数が多くなると、性的なことばかり起きていると錯覚したり、「恋愛やセックスをするのはメジャーなこと」と無意識に捉えてしまったりする人がいるかもしれない。だからこそ、「このチャンネルは猥談をテーマにしてるけど、いろんな人がいて、だから世界は面白いんだよ~!」と伝えることが必要だと思っています。 ――最近は「性」を離れて、日常的なテーマを取り上げたりと、幅広い話題を扱っていますね。 佐伯ポインティ: 「仕事ができない人は何を考えているか」を説明した動画は反響が大きかったです。仕事ができる人がやり方を伝授するようなコンテンツは多いじゃないですか。でも、できない人の思考パターンは意外に言語化されていないので。 仕事ができる人が、その動画を見ることで「できない人って、こういうこと考えてたんだ!」とハッとするみたいな。ミスを連発しまくってた新卒のときから「仕事できる人って、何で仕事できない人のこと分からないんだろう……?」って他人事みたいに思ってたので(笑)。他にも同じようなことはあると思うので、まだスポットライトが当たっていないものや、語られにくいことを扱っていきたいなと思ってます。