薄軽VAIOの旗艦モデル「VAIO SX14-R」の“数値以上の変化”を知る
処理能力優先のPerformance-cores(Pコア)を4基、省電力を重視したEfficient-cores(Eコア)を8基組み込んでいるほか、低消費電力 Efficient-core(LPEコア)を2基備えている。Core Ultra 5 125Hは2023年末に登場した“Meteor Lake”に属するので、Pコアはインテル ハイパースレッディング・テクノロジーに対応しているので、CPU全体としては14コア18スレッドとなる。 Core Ultraに統合されたグラフィックスは、Meteor LakeのUラインアップのIntel UHD Graphicsの系譜とは異なり、Xe-LPGを採用するIntel ARC Graphicsを採用している。Xeコアは7基を組み込み、グラフィックスコアとしての動作クロックは最大で2.2GHzに達する。さらに、独立したAI専用エンジン(NPU)として「Intel AI Boost」を実装しており、AI処理に関するスピードを高速かつ高い電力効率で実行できる。 この他、処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR5x-6400を採用していた。容量は16GBでユーザーによる増設はできない。ストレージは容量512GBのSSDで試用機にはSamsungのMZVL2512HDJD-00B07を搭載していた。接続バスはPCI Express 4.0 x4だ。 Core Ultra 5 125Uを搭載したThinkPad X1 Carbon Gen 12の処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Time Spy、CINEBENCH 2024、CrystalDiskMark 8.0.5 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:黄金のレガシーを実施した。 なお、VAIO SX14では、性能向上機能「VAIO TruePerformance」を活用するユーティリティを用意して、CPUやクーラーユニットの動作モードを「パフォーマンス優先」「標準」「静かさ優先」から選択できるようにしている。ここでは、「パフォーマンス優先」モードを指定してスコアを測定した。 また、なお、比較対象としてCPUにCore Ultra 5 125U(4+8+2スレッド:P-core 2基+E-core 8基+LPE-core 2基、動作クロック:P-core1.3GHz/4.3GHz、E-core800MHz/3.6GHz、LPE-core700MHZ、L3キャッシュ容量:12MB)を搭載し、ディスプレイ解像度が1920×1200ドット、システムメモリがLPDDR5x-6400 16GB、ストレージがSSD 256GB(PCI Express 4.0 x4接続、HFS256GEJ9X164N SKHynix)のノートPCで測定したスコアを併記する。 CPU:Core Ultra 5 125H(P-cores4基+E-cores8基+LPE-cores2基、動作クロックP-cores1.2GHz/4.5GHz、E-cores700MHz/3.6GHz、L3キャッシュ容量18MB) メモリ:16GB (LPDDR5x) ストレージ:SSD 512GB(PCIe 4.0 x4 NVMe、MZVL2512HCJQ Samsung) 光学ドライブ:なし グラフィックス:Iris ARC Graphics (CPU統合) ディスプレイ:14型 (1920×1200ドット) 光沢 ネットワーク:IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax対応無線LAN、Bluetooth 5.4 サイズ / 重量:W312.0×D226.4×H13.9~18.9mm / 最軽量構成で999g OS:Windows 11 Home 64bit ベンチマークテスト VAIO SX14-R 比較対象ノートPC PCMark 10 6334 5812 PCMark 10 Essential 10250 10123 PCMark 10 Productivity 7985 8016 PCMark 10 Digital Content Creation 8428 6568 CINEBENCH 2024 Multi Core 636 509 CINEBENCH R23 Single Core 99 93 CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Read 6719.70 4814.06 CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Write 4786.10 2725.34 3DMark Time Spy 2853 2175 FFXIV:黄金のレガシー(最高画質) 3223 3460 評価機材ではIntel Core Ultra 125“H”、比較対象ではIntel Core Ultra 125“U”を搭載しているが、まさにその電力消費の部分で差が出ている。特に、PCMark 10 Digital Content CreationとCINEBENCH 2024 Multi Coreといったマルチスレッドの処理能力、そして、3DMark Time Spyのスコアで明確な差が確認できる。 ただ、両者の動作クロックを比べるとベースにしてもピークにしてもわずかな差だが“U”が高い。その影響かその他のスコアでは明確な違いとまではいかず、FFXIV:黄金のレガシーでは“U”搭載比較対象ノートPCが上回る結果となっている(その差もわずかだが)。 なお、ストレージの転送速度を評価するCrystalDiskMark 8.0.5 x64では、シーケンシャルリードにしてもシーケンシャルライトにしても、VAIO SX14-RのスコアがPCI Express 1.3 x4接続の比較対象ノートPCのスコアを大幅に上回った。ただ、これはそれぞれの搭載しているSSDのクラスがVAIO SX14-Rは最上位モデルなのに対して、比較対象ノートPCではミドルレンジなのが影響しているのかもしれない。 なお、VAIOの公式データでは、VAIO SX14-Rのバッテリー駆動時間はJEITA 3.0の測定条件で動画再生時約10.5時間、アイドル時で約26.0時間となっている。評価機材で内蔵するバッテリーの容量は、PCMark 10のSystem informationで検出した値で51150mAhだった。PCMark 10 Battery Life benchmarkで測定したところ、Modern Officeのスコアは16時間6分(Performance 5718)となった。 先に言及したように、VAIO SX14-Rではユーティリティの設定でCPUとクーラーファンの動作モードを「パフォーマンス優先」「標準」「静かさ優先」で変更できる。これは、VAIOが開発した独自機能「VAIO True Performance」を活用したもので、電源強化や放熱能力の向上によって、処理能力の向上と静音動作の両立を可能にしている。 では、それぞれのモードで処理能力とクーラーユニットの発生音量とボディーの表面温度はどのように変わるのだろうか。それぞれのモードでCINEBENCH 2024とPCMark 10を実行したときのスコアと3DMark Night Raid実行時に測定したシステム音圧は以下のようになった。 動作モード 静音 標準 パフォーマンス優先 発生音量(暗騒音36.4dBA) 36.6dBA 39.4dBA 47.4dBA CINEBENCH 2024 Multi 245 329 624 CINEBENCH 2024 Single 88 97 99 静音モードでは暗騒音とほぼ同じ値で実際にファンの音はほとんど聞こえない。また、標準モードでもファンが回っていることは常時認識できるものの、その音はわずかで静かな図書館でも気兼ねなく使えるだろう。ただ、パフォーマンスモードになると、測定値もさることながら、主観的な肌感覚としても周囲がファンの音を明確に認識できるほどの音量なのは否めない。 スコアについてみてみると、標準モードのスコアはパフォーマンス優先モードの半分程度に収まっていることがわかる。シングルにおける性能への影響はあまり大きくないが、マルチスレッドに大きな負荷がかかる用途ではしっかりパフォーマンス優先モードを選択して運用した方がベターだと言えそうだ。 ■軽さと性能を両立し、新色を投入して挑戦を続ける「VAIO SX14-R」 Meteor Lakeを搭載し、装い新たなディープエメラルドカラーに身を包んだ最新「VAIO SX14-R」。旺盛な法人需要に対してアーバンブロンズからさらなる新色を追加しつつ、性能向上にも注力されている。ボディには新素材を用いたことで14型ながら最軽量構成で約999gの軽さを実現し、持ち歩いての利用もより快適に。もちろん全個体がメイド・イン・ジャパン、安曇野生産を継承しており、やや希少になりつつある国産PCを選択したいユーザーにも向くはずだ。
長浜和也