【F1メカ解説】メルセデスがモナコに持ち込んだ新型ウイング。初期のフィードバックは良好……”弱点”の少ないマシンへの第一歩に?
今シーズン前半戦は、昨シーズン以上に厳しい戦いを強いられているメルセデス。レッドブルのみならず、フェラーリやマクラーレンにも後れを取っている状況だ。 【ギャラリー】”爆発”する個性……史上最もワイルドなデザインのF1マシントップ50 この状況を打破するためにメルセデスは、モナコGPにアップデート版のフロントウイングを投入。ドライバーひとり分しか用意できなかったため、これはジョージ・ラッセルのみが使うことになった。 この新しいフロントウイングを見ると、メルセデスは様々な速度域でのパフォーマンス向上を目指すため、アプローチを変えていることが伺える。 今季のメルセデスは、パフォーマンスを発揮できる領域が狭くなっていると見られている。高速コーナーでは高い戦闘力を発揮するものの、低速コーナーではパフォーマンスが不足する……この低速パフォーマンスを補うと、今度は高速コーナーのパフォーマンスが犠牲になる、そんな状況だった。 メルセデスにとっての課題は、パフォーマンスを発揮できる領域を広げること、つまりマシンがあらゆる速度域で機能するように改善することだった。 チーム代表のトト・ウルフはこれについて、次のように説明した。 「我々がやっているのは、おそらくその問題を解決することだ。現段階では、掛け布団が短すぎるようなものだ。でも頭も足も覆うことができる、そんな掛け布団を手にするところに、我々は近づいている」 「モントリオールは、我々にとっては少し適していないコースだが、そこに何かを持ち込もうとしている。バルセロナでも、何かを加えるつもりだ。後退することもあるかもしれない。それを念頭におきながら、少しずつでも前進しようとしている」
■メルセデスの新型ウイングは、どう変わった?
メルセデスの新しいフロントウイングは、完全にデザインが見直された。シーズン開幕当初は、最上部のフラップの車体中心線に近い部分が棒のような形状になっており、注目を集めた(赤い矢印の部分)。しかしこの斬新なデザインは廃棄され、ごく一般的なウイングの全幅に沿ってフラップがしっかりと存在する形になった。 このことにより、フラップの車体中心側にある可動しない部分が狭くなり、角度を調整できる部分の面積が広くなった。 これによって得られる最大のメリットは、セッティング時に柔軟性を待たせることができるという点だ。つまり様々な速度域で、マシンをうまく機能させることができる可能性が広がったと思われる。 この変更に伴い、ノーズ本体の形状も変更。さらに、フロントウイングのメインプレーンの中央部のデザインも変わった。メインプレーンの中央部分は、以前よりもより平らな部分が増えたわけだ(比較のために赤い線で強調してあるので、ご確認いただきたい)。 なおメインプレーンは、外側の部分にも若干の変更が施されている。従来のデザインでは、メインプレーンの翼端板に近い部分が少し上方に持ち上げられた部分(黄色で強調)があったが、新しいデザインではこれがなくなり、よりシンプルな形状になっている。