天文台にかかる虹 アメリカのキットピーク国立天文台で撮影
こちらは米国アリゾナ州のクインラン山地にあるキットピーク国立天文台に出現した虹です。はるか宇宙の彼方で輝く星々を観測する望遠鏡と、天の高みを目指してかけられた梯子のような虹の組み合わせが印象的な一枚。美しさを感じさせる光景ですが、実は虹と天体望遠鏡には科学的なつながりもあります。 今日の宇宙画像 キットピーク国立天文台では口径4メートルのメイヨール望遠鏡をはじめ、20台以上の光学望遠鏡や電波望遠鏡が様々な天体の観測に使用されています。望遠鏡は人間の目で見るのと同じような画像の取得だけでなく、天体から届いた電磁波の波長ごとの明るさを示した「スペクトル」を取得するための分光観測にも用いられます。スペクトルを得るにはプリズムで光を分散させる方法がありますが、この仕組みは太陽光が雨滴で屈折・分散されることで生じる虹と原理的には一緒。つまり虹は、雨滴を天然のプリズムとして得られた太陽光のスペクトルだと表現することもできるのです。
次の画像は、キットピーク国立天文台のマクマス-ピアス太陽望遠鏡で取得された太陽のスペクトルです。波長400~700ナノメートルにわたる細長い帯状のスペクトルを1枚の画像にまとめたもので、左から右、下から上へ進むにしたがって光の波長が長く、言い換えれば色が青から赤へと変化していきます。 分光観測で得た太陽光の詳細なスペクトルにはいくつもの暗い部分が現れます。これは「吸収線(暗線)」と呼ばれるもので、原子・分子・イオンがそれぞれ決まった波長の電磁波を吸収することで生じます。これらの吸収線は発見者の名前にちなんでフラウンホーファー線とも呼ばれています。 天体のスペクトルには吸収線の他にも、原子などが決まった波長の電磁波を放つことで生じる明るい線「輝線」が現れることもあります。吸収線と輝線は合わせて「スペクトル線」とも呼ばれます。分光観測で得られたスペクトル線からは、その天体の化学組成や視線方向(※観測者に対して近付いたり遠ざかったりする方向)の運動速度などを知ることができます。