「察して」で逃げずに言葉で説明できるようになった夫。夫の気づきと変化を敬うようなった私【小島慶子】
今も、整理し切れてはいない。妻を大事にする人が、なぜ妻と同じように命があり名前のある他の女性をモノのように扱って平気だったのか。その女性にとってもまた、夫はモノのように名前のない存在だっただろう。でも心身の健康と安全を高いリスクに晒して働く立場の弱い労働者である女性と、その女性を娯楽として消費する立場の人間には著しい力の差がある。金でサービスを買っているのだから相手を人間扱いしなくてもいいという顧客の傲慢な態度は、日本のさまざまなサービスの現場で働く人を苦しめている。たとえ普段の買い物では丁寧で礼儀正しい男性でも、女性がサービスを提供する場では顔や体を値踏みして蔑み、加害者になることもある。けれど「男はそういうもの」と許容されている。男の性欲はコントロールできなくても仕方がないと信じている人は、男性にも女性にも多い。
小島 慶子