WBC指令で矢吹正道VS寺地拳四朗の因縁リマッチ決定も…JBCの“情報隠蔽疑惑”に怒りが爆発…釈明など通用しない不手際
WBCはローカルコミッションであるJBCに敬意を表して頭ごしに公式アナウンスを行うことを控えていたが、JBCからの連絡も発表もないまま再戦指令の情報だけが一人歩きしていたため緑ジムの松尾会長が10月29日にJBCの成富毅事務局長に「どうなっているのか。王者として選択試合を進めていいのか」と電話で問い合わせた。 すると成富事務局長は、「緑ジムがチャンピオンなのだから次の試合は選択試合にしてください。WBCの再戦命令は来ていません」と回答したという。JBCの事務方トップの発言だけに松尾会長は、そのやりとりを「証拠として録音をとっている」と言う。 JBCの了承を得た緑ジムでは、選択試合としての初防衛戦を画策。「スポンサーも地元のテレビ局も多いに乗り気になってくれていた」という。ところが急転、WBCからの再戦指令が出ていることが判明した。11月10日に成富事務局長から寺地、松尾両会長に電話連絡が入り「9日にWBCからの再戦指令がきたのでお伝えします。正式にはWBC総会で発表される」と伝えらた。 しびれを切らしてWBCに直接問い合わせていた山下会長のもとに電子レターが届いたのも11月10日。10月18日付で10月19日にはJBCに届いていた電子レターと同じものが添付されており、そこにはWBCの役員が試合をビデオで検証、拳四朗の王座陥落は、衝撃的と受け止めるとともに、これまでの功績を考慮し、ダイレクトリマッチを指令。「寺地の傷が治り次第、可能な限り早く、再戦をするように」と記されていたという。山下会長は、すぐさま松尾会長に連絡を取り、「再戦命令に背くとタイトルを剥奪されるので、ただちに(選択)試合を進めるのは止めてもらいたい」と伝えたという。 WBCの日本に対する対応は非常に真摯でスピーディーだ。山下会長が問い合わせた翌日には返信があった。JBCが先月19日に届いたレターになんらかの問題を感じていたとしてもWBCに問い合わせればすぐに返答があっただろう。WBCが今月9日までJBCからの問い合わせを放置していることは考えられない。 寺地会長は、「隠蔽しようとしていたのか。先延ばししても分かることなのに幼稚。組織としてどうなのか」と問題視したが、JBCがどんな釈明をしても、この時間のロスだけは言い訳できない。もはや業務の怠慢だ。 松尾会長は「その間はヘビの生殺し状態だった。できない人が事務局長にいるのはいかがなものか」と怒り心頭なのももっともだ。成富事務局長の言質を取っているだけに損害賠償請求さえできる案件だろうが、JBCが両陣営に対して、今回の問題の不手際を説明、謝罪しなければ、注目のダイレクトリマッチもスムーズには開催されないだろう。 因縁のリマッチは早ければ来春に実現する。松尾会長は「できれば名古屋で開催したい」と主張したが、ダイレクトリマッチでは興行権は元王者側にあるため、その可能性は少ない。開催場所としては、大阪になりそうだが、“殿堂”のエディオンアリーナは、3月は大相撲の春場所が開催される予定になっており、使用できないため4月にずれ込みそうだ。 「あの試合では両選手とも傷ついた。私は中立の立場。コンディションを整えて、最高の試合をしてほしい」と、山下会長が期待を寄せれば、寺地会長も「対戦が決まった以上は勝っても負けてもスッキリ終わって、いい試合だったね、と言われたい」と潔かった。 肝心の拳四朗は、まだ現役続行を表明していないが、2日前からジムで体を動かし始めており、WBC総会で再戦指令が公式にアナウンスされることを受け会見が行われる予定。一方の矢吹も激闘から1週間後にはジムワークを再開。その日に備えている。JBCの対応に後味の悪さは残るが、ボクシングファンにとっては待望の因縁リマッチ。ゴングが待ち遠しい。 (文責・山本智行/スポーツライター)