WBC指令で矢吹正道VS寺地拳四朗の因縁リマッチ決定も…JBCの“情報隠蔽疑惑”に怒りが爆発…釈明など通用しない不手際
プロボクシングWBC世界ライトフライ級王者・矢吹正道(29、緑)と前王者の寺地拳四朗(29、BMB)が来年春に再戦することが15日、明らかになった。試合の興行権を持つ真正ジムの山下正人会長が寺地永会長、松尾敏郎会長と同席で大阪市内で会見し両陣営が再戦に合意したと発表したもの。両者は9月に対戦、矢吹が10回TKOで勝利し、拳四朗は9度目の防衛に失敗したが、パンチによるものと判断された右目上の流血を巡って、寺地陣営が「故意のバッティングではなかったか」との質問状をJBCに送った。その再調査の結果を検討したWBCが拳四朗のこれまでの貢献も認めてダイレクトリマッチを指令したものだが、その再戦指令は、先月19日(18日付)に日本ボクシングコミッション(JBC)に届いており、約3週間に及ぶ“情報隠蔽”とも取れるJBCの不可解な対応に両陣営ともに怒りをぶつけた。
故意のバッティングは相いれない
あの激闘の第2章がダイレクトリマッチという形で実現する運びとなった。 緑ジムの松尾会長は、「故意のバッティング」という寺地陣営の主張に関しては「あんな素晴らしい試合をして、私自身もセコンドとして勝利の瞬間はやっちゃいけないのにリングに入ってしまったほど。死ぬか生きるかの死闘、その流れの中で起こった行動。選手を守る立場でもあるし、寺地会長には”その言葉、撤回してよ”という思い」と相いれなかったが、WBCが理事会を開いて出した結論だけに再戦指令を受け入れて両者が合意に達した。盛り上がること間違いなしの因縁マッチである。 だが、合意は約3週間遅れた。ここに至る過程で、JBCによる前代未聞の情報隠蔽疑惑という大問題が起きていたのである。この試合のプロモーターでもある真正ジムの山下会長が半ばあきれながら思いを口にした。 「まずはJBCには”しっかりしろ!といいたい。井岡、田中戦でもそう(ドーピング問題)。JBCの間違った手続きでせっかくのいい試合に汚点というか、ケチがつく形になった。最近は、いろんな試合でゴタゴタが続いている。大切なのは選手。管理体制をしっかりして、選手を巻き込んで欲しくない」 ことの発端はこうだ。拳四朗は9月22日、地元の京都市体育館で行われた9度目の防衛戦に失敗。矢吹の熱いファイトの前に10回TKOで敗れて王座から陥落した。9回には右目の上をカット。レフェリーは「パンチによるカット」と判断してドクターチェックも行われず、そのまま流血がひどくなれば、TKO負けになる危険性もあるため、拳四朗は10回に勝負をかけて返り討ちにあった。だが、試合後に寺地陣営が映像を確認すると、明らかに頭がぶつかっていたため、「故意のバッティングによるものではなかったか」との質問状を10月5日付で辻口弁護士を通じてJBCと、その試合のスーパーバイザーでもあった安河内剛氏に送付した。 JBCは、ただちに映像の再検証と、現場の関係者の聞き取りなどを行い、WBCに寺地陣営からの“抗議”があったことと拳四朗のカットに関する調査結果を報告した。ネット上でも「ひどいヘッドバッド」などの書き込みが多く見られ騒動となっていたため、WBCは、それらの報告をもとに独自に再検証を行い役員会を開いた上で「拳四朗が負った傷はヒッティングによるものではなく偶然のバッティングのように見受けられる。8度防衛した拳四朗のWBCへの貢献も考慮して、傷が治り次第、ダイレクトリマッチを命じる」との結論を出し、18日付の電子レターにて、その決定内容をJBCに伝えた。ローカルコミッションであるJBCはWBCからの再戦指令をただちに両陣営に通達しなければならないが、なぜかその情報はJBC内に留め置かれた。 おそらく寺地陣営に弁護士を通じて回答したJBCの見解とWBCの見解に相違がみられたため通達のタイミングに躊躇したと推測されるが「隠蔽」と取られても仕方のない対応だ。 山下会長は「入り口の段階からおかしく、ほんろうされた」と断言した。