高卒工場勤務がITベンチャーで下剋上。社内MVPから一転、コーヒー屋を地元・小田急沿線で立ち上げ
成績は下から数えてすぐの順位。授業中は携帯を触るか、漫画を読むか、寝ているか。唯一の長所は欠席がゼロということ。 【全画像をみる】高卒工場勤務がITベンチャーで下剋上。社内MVPから一転、コーヒー屋を地元・小田急沿線で立ち上げ 当時高校生だった酒井涼旦郎(さかいりょうたろう)は、当たり前に大学進学の選択肢もなく、高校に届いた求人票の中から「家から歩いて行けるくらい近い」という理由で、地元・厚木のサントリーコーヒーロースタリーの工場を志望した。 この選択が酒井をコーヒーの世界へと誘い、地元・厚木で始めた焙煎所へとつながっていく。
厚木尽くしのコーヒー屋
「厚木珈琲 The Roastery」は、神奈川県・厚木駅から歩いて15分ほど、海老名市の市境を流れる川のほど近くに位置する。 インダストリアルな雰囲気の店内では、豆やドリップバックの購入・テイクアウトのコーヒーを提供する。ずらりと並んでいる店内のコーヒーは全て試飲可能だ。 豆は、グアテマラのコーヒー生産者団体「GOOD COFFEE FARMS」と直接取引を行っている。 コーヒー農園の一区画を借りた自社農園で栽培する豆も取り扱う。毎年農園へ足を運び、店に届くまで品質のこだわりを徹底している。 その豆を使用した「ATSUGI COFFEE FARM」は、優しくて口当たりの良い飲みやすさが特徴の一番人気の商品だ。 ベッドタウンとしても知られる厚木は神奈川県の中央に位置し、駅前はアーバンな雰囲気がありつつも、少し西へ行けば雄大な自然が広がる。1200年続く老舗旅館もあり、文化的な側面もある。 厚木生まれ、厚木育ちである酒井は、そんな地元に惹かれて厚木産にとことんこだわったコーヒー屋を経営する。「ここでしか飲めないコーヒー」を提供したいという思いからだ。 例えば、コーヒーの99%を占める水。この地域に湧き出る丹沢山の新鮮な水を使用している。店内にあるスイーツも、厚木のスイーツショップ「幸せの丘」とコラボした商品だ。 印象に残る筆書きのロゴは、厚木と隣接する伊勢原市にある大山阿夫利神社に頼み込んで、半年通い詰めて書いてもらった。 コーヒーで厚木の魅力をさらに伝えるべく、2023年4月には本厚木ミロードにも店舗をオープンした。 さらには、ロンドンのヒースロー空港でも、厚木珈琲の豆が試験販売されている。ローカルからグローバルへ、どんなチャンスも結果に変えてきた。