この夏の惨事のラスボス! ヤフオク7万円のシトロエン・オーナー、エンジン編集部ウエダ、まさかのオーバーヒートか?【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#51】
あぁ「新車で買うより安い!」という言葉が虚しく響く(涙)
ヤフー・オークションで7万円のシトロエン・エグザンティアを手に入れ、10カ月と200万円かけて大規模修復後、走り出したエンジン編集部員ウエダによる自腹散財リポート。1年目の夏は無事乗り越えたが、2年目の夏は次々と経年劣化による部品の寿命に襲われる羽目に…… 【写真86枚】ヤフオク7万円のシトロエンをこの夏最大の惨事が襲う! クルマの下に流れ出た液体の写真の正体は? ◆木陰で休憩していると…… 2年目の夏の前半はシフト・ノブ内部のロッド破損や、ステアリングのパワー・アシストの不調が発覚し、ほとんど工場内で過ごすことになったエグザンティア。ようやく自宅のガレージに戻ってきたのは、2023年7月上旬のこと。休む間もなく翌日早朝から通常業務に復帰し、順調にオド・メーターの数字は伸びていった。 現場復帰からちょうど1週間後の週末には、家族を乗せて山梨県まで日帰り旅行へ。この日は車載の外気温計はずっと40度を越していた。エグザンティアの温度センサーはドア・ミラー下側にあり、基本エンジンや排気系の熱は拾わないとはいえ、夏場は路面の照り返しもあって、外気温よりやや高い数字を示す。 とはいえクーラーを稼働させていれば、車内はしっかり冷える。水温計の針の動きも登り坂が続く中央道などではやや上向きになるが、十分許容範囲内だ。目的地は山梨市にある笛吹川フルーツ公園と、その奥の眺望の良さで有名なほったらかし温泉。そして事件が起こったのは、公園入口にある売店で桃を買った後、向かった温泉の駐車場だった……。 照りつける日差しは、青い車体をまるで焦げつかせるかのような勢いだった。幸い広い駐車場の隅に小さな木陰があり、エグザンティアを前から突っ込む。車体の温度が、一気に下がるのが分かる。少しでもエンジン・ルームに籠もった熱を逃がしておこうと、ボンネットを開けてしばし珈琲を飲みながら休憩していると、隣でジュースを口にしていた息子がちょっと焦りながらこう言ったのである。 「あれぇ、なんか湯気が出てない?」 「えっ!? まさか? オーバーヒート?」 木陰でのんびりしている家人には悟られないよう、素早くチェックする。確かにエンジンに向かって左側で、陽炎が揺らめいているようだ。ぶくぶくぶく……と小さな音も聞こえる。音を頼りに探すと、冷却水の入っているタンクの、キャップの周囲が泡立っていた。ふたが閉じきっておらず、圧がちゃんと掛かっていないようだ。 ここで焦ってこのキャップを開けると、沸騰した冷却水が噴き出して危険だ。とりあえず放置し、人間はのんびり温泉につかって暖まり、その間にリポート車はしっかり木陰で冷えてもらうことにした。 ◆原因はキャップのへたりと…… 温泉から戻りキャップを開けると、タンク内の冷却水は、ほとんど減っていなかった。エグザンティアの冷却水タンクとキャップはいずれも樹脂製で、回して締めていくと両者のつめで最後にカチっと固定されるタイプだ。 幸いこのつめもともに無事で、しっかり閉まっている。それでも漏れたということは、キャップ内側のゴム・シールが劣化し、痩せてしまったせいだろう。 念のため水道水を少し足し、キャップの向きを180度代えて閉めてから再始動する。しばし待って様子を見ても、どうやら冷却水は漏れてこない。泡も出ないし、水温も安定している。 いちおう帰り道は念のため、常に水温計を睨んで走った。大事を取って最初は一般道をゆっくり走り、渋滞がないことを確認し途中から高速道路へ。いつもと違うルートで、しかもやけにゆっくりとした僕の運転ペースに家人は怪しんでいたが、午後には無事、自宅ガレージへ戻ることができた。 翌朝、ふたたびガレージで冷却水を点検、念のため水道水を補充する。タンク・キャップ自体はさほど高い物じゃないから問題ないが、シールの不良で冷却水のラインにエアが噛むのはマズイ。3カ所あるエア抜きバルブの位置を主治医のカークラフトに電話で教えてもらい、順番に緩めて抜いていく。幸いエアもほぼ噛んでいなかった。
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