海外メディアは異例ずくめの東京五輪をどう評価したのか…「優しく寛大で忍耐強かった日本人」「指導者が安全・安心を裏切る」
ニューヨークタイムズ紙は「思い出に残るオリンピック。その理由は正しいものか?」という見出しで、記憶に残る大会だったが、果たして五輪開催は正しいものだったのだろうか、と問いかける検証記事を掲載した。 「昨年IOCのトーマス・バッハ会長が語ったようにパンデミックの中で開催されたこの大会は、『全世界が通っているこの暗いトンネルの終わりの光』となるはずだった。しかし、社会から切り離された閉所恐怖のような状態になることが多かった」と、出場選手や関係者が選手村のバブルに閉じ込められ、大会もほぼ無観客で行われたことを「閉所恐怖」という言葉で表現。 大会開催への葛藤は、一般の人々だけでなく、社会から切り離された環境で競技するアスリート側にもあったことをレポートした。 「アスリートたちにとって、今回の五輪は生き延びること、なんとかやり遂げること、そして最後には目標に届かなくても構わないと思うことのできる五輪だった。しかし、メダリストの中にも、この場にいることや、歴史上最も奇妙な五輪の一つである疎外感のある状況に耐えることに対し相反する感情を抱いている人もいた」 またほとんどの競技が無観客となったが、一部の観客がスタジアム近辺に集まり、“チラ見”をしていたという現状も伝えている。 「オリンピック・ファン・パークは、チケットを持っている人たちのための広大なお祭りの場所だったが、南京錠のかかったフェンスに閉ざされ、使われていないテーブルやアトラクションが並んでいた。しかし、東京の人々は、大会の様子を小さな鍵穴から垣間見ることができた。電車の駅(ゆりかもめ・有明テニスの森駅)からBMXのコースを眺めたり、陸橋の上からスポーツクライミングの壁を眺めたり、自転車レースが疾走する道端から見たり。また東京湾に近い歩道橋では、毎晩のようにささやかに人が集まり、警備員やボランティアが半ば強制的に移動を促す中、写真を撮ったりしていた」 強行開催と、その運営方法も厳しい批判にさらされているが、一方で、今大会を評価する意見もあり、19回目の五輪参加となったオリンピック史家のデビッド・ワレチンスキー氏は、「もし新型コロナのパンデミックがなかったら最もよく組織された五輪として歴代の上位に近いものだったのではないか」というコメントを寄せている。 英ガーディアン紙は、「親切さと異常なコントロール」をテーマに東京五輪を取材したバーネイ・ロネイ特派員が、五輪の取材生活をまとめた。 通常の五輪であれば、記者は街の中に出て、タクシーの運転手や街の人からさまざまな話を聞いているそうだが、今大会では感染防止のため14日間の隔離生活を強いられた。 「密閉された部屋から通路へと移動し、アプリで撮影、追跡され、身を縮めていた2週間の隔離生活が終わった。ガーディアン紙の記者が開幕から14日間、五輪会場以外に行った場所はホテルにあるコンビニだけだった」