労わるつもりのサプリで逆効果も!? 肝臓の機能低下で起こる怖いこと(専門家が監修)
急激に広範囲に肝細胞が破壊される肝炎
近年、減ってはきているものの肝炎ウイルスによって引き起こされる急性の肝障害についても触れておこう。 原因ウイルスはA、B、C、D、E型の5種。ただし、D型による急性肝炎は日本人にはほとんど見られず、最も多いのはB型ウイルス由来。初期症状は発熱や頭痛、だるさや食欲不振なので単なる風邪と間違われやすい。やがて黄疸や色の濃い尿、血液検査で異常値が出て、この段階で急性肝炎と診断されることが多い。 ほとんどの場合は入院治療によって回復するが、稀に重症化して劇症肝炎に進行する。劇症肝炎はあっという間に、しかも広範囲に肝細胞の壊死が起こり、肝性脳症なども伴う恐ろしい病態。最初の症状が見られてから10日ほどで急速に悪化し、死に至ることも。
肝移植後には免疫との闘いが待っている
悪い生活習慣から脂肪肝に陥り、さらに進行して遂にはもう後戻りできない肝硬変へ。こうなれば最後の頼みの綱として肝臓移植という選択もある。とはいえ、世の中そんなに甘くない。 「脳死状態のドナーは非常に数が少ないので、移植先としては先天性の若い肝臓病の患者が優先されます。となると残るは肉親などの肝臓の一部を移植する生体肝移植の可能性があり、この場合の定着率は約8割といわれています」 肝臓の一部を移植して健康を取り戻すことができるのは、肝臓が本来持っている驚異的な再生能力のおかげ。でも、めでたしめでたし、と喜んでばかりもいられない。 「移植後は拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤を一生飲み続ける必要があります。さらに必要な免疫反応も抑制されるので感染症のリスクが高くなることも、また事実です」
取材・文/大吹雪ジュン 編集/阿部優子(初出『Tarzan』No.870・2023年12月14日発売)