京アニ裁判 精神鑑定なぜ判断分かれる?「死刑制度が結果歪める」精神科医の問題提起 #ニュースその後
被害妄想と誇大妄想が基本症状
岩波氏はこれまで東大病院精神科、東京都立松沢病院、埼玉医科大精神科、現在の烏山病院など一貫して精神医療の現場に従事。その中で多くの統合失調症の患者に向き合ってきた。『精神鑑定はなぜ間違えるのか? 再考 昭和・平成の凶悪犯罪』といった著書もある。 厚生労働省による2020年の調査によると、統合失調症の人は約88万人いると推計されている。岩波氏によれば決して珍しい病気ではないという。 「統合失調症は総人口の1%前後が発症すると言われています。遺伝だけでは規定されていません。ただ、症状の程度は様々です。青葉被告くらいの妄想に駆られる人は結構いますが、何らかの行動に出る人はそんなに多くいません」 世界的な診断基準であるDSM-V(米精神医学会作成)によると、下記のような症状、行動のうち二つ以上が1カ月ほとんど常時存在しているのが統合失調症の特徴だという。 ・妄想 ・幻覚・幻聴 ・まとまりのない発語(支離滅裂な言動) ・ひどくまとまりのない行動(または緊張病性の行動) ・陰性症状(意欲低下など)
発症当初はうつ病や不安障害、発達障害など他の疾患との区別がつきにくいケースがあるが、統合失調症ならではの特徴もある。それが「他者に対する被害妄想」だという。 「被害妄想に関する幻聴。それから誇大妄想。それが統合失調症の基本症状です。症状がそこまで重くなくて社会生活はある程度できて、仕事もこなせるけれど、被害妄想があるという人も少なからずいます」 統合失調症は10代後半から30代までに発症する人が多いとされるが、青葉被告もそんな一人だった。
37歳で統合失調症と正式に診断
青葉被告は1978年5月、埼玉県で生まれた。2歳上の兄、1歳下の妹、両親の5人家族。小学生のとき、父親が家庭内暴力を始めて両親は離婚。父親のもとに子どもは引き取られた。だが、父親は子どもたちを虐待。被告は中学の頃から不登校になる。この頃から、他者から攻撃されるような幻覚・幻聴が始まり、高校時代の途中まで続いたと公判で語っている。 実際に統合失調症と診断された過去もある。2012年、青葉被告は茨城県内のコンビニエンスストアで包丁を突きつけて2万円を強奪、実刑判決を受け水戸刑務所に収監された。だが、刑務所内で暴言や粗暴な行動をたびたび起こし、13回の懲罰を受けたうえ、保護室にも収容された。収容された早い段階から統合失調症が疑われていたが、2015年10月、正式に統合失調症と診断された。