プロ野球のスタジアムでよく広告を見る「エイジェック」、元甲子園球児の社長の野球愛がつまった知られざるその姿
■ プロ球団のそれを凌ぐ施設 施設を案内してくれた五十子(いらご)貴治センター長は話す。 「『エイジェックスポーツ科学総合センター』はスポーツ人材派遣業として発展してきたグループの拠点となる施設です。 我々の発祥の地である栃木から全国発信できる施設を作りたい、人々の健康な体つくりを目指す、そして人材を育成するための教育の場にしたい、と3つの目的で設立しました。 人材育成に関しては、一般のスタッフだけでなく、最先端のデータ施設の特性を活かしてアナリストやスポーツトレーナーなども育てていきたいと思います。 顧客としては、まずはトップアスリートの方に来ていただきたいなと思っています。カウンセリングをして、プログラムを作って測定をして、自身の体力の数値を知って、その向上を目指してトレーニング方法を考えていく。それと並行して、一般の方の身体能力の分析、解析などもしていきます。 うちは野球以外のスポーツにも対応できますが、やはり野球に特化した施設なので、まずは、プロ野球選手が2月の春季キャンプ前などに来て、自身の体をチェックするなどに使っていただきたいですね」
筆者は、NPB各球団のトレーニング施設を取材している。横浜DeNAベイスターズが横須賀につくったDOCKや、埼玉西武ライオンズが2021年に所沢の本拠地に併設して造ったトレーニング施設など、各球団は、競って最先端の施設をつくりつつあるが「エイジェックスポーツ科学総合センター」は、これらを規模、内容ともに凌駕している。 ■ 各地で充実し始めた民間のトレーニング施設やラボが起こしつつある野球革命 近年は、球団や行政、大学などではなく、民間のトレーニング施設やラボもできている。千葉県市川市の「ネクストベース」は、大谷翔平などが通うアメリカの「ドライブライン」に匹敵すると称され、プロ野球選手が通っているが、野球少年たちも利用している。 また、群馬県桐生市の「球都桐生野球ラボ」は、高校跡地を活用し、先進の計測機器を備えたトレーニング施設だ。ここは桐生市の支援によって地元の子供が利用しやすい価格設定になっている。 さらにスポーツ総合メーカーのミズノは、大阪市の本社の隣にイノベーションセンター「MIZUNO ENGINE」を創設した。これは研究開発拠点だが、ここでも先進の機器によって選手のデータ計測を行っている。 この流れで考えれば「エイジェックスポーツ科学総合センター」は、日本の野球界にようやく訪れた「データ革命」の最先端の施設の一つだといえる。 「野球離れ」を食い止めるのは「精神」「根性」ではなく「知性」と「科学」なのだろう。 単なる振興、支援ではなく、多角的なスポーツビジネスをする中で野球をビジネスに組み込んでいく。「野球愛溢れる企業」エイジェックの今後に期待したい。
広尾 晃