不登校の子、高校受験に調査書の壁 特別枠設ける自治体も #令和の子
塾講師の男性は、全ての生徒に調査書を使う入試の限界にきているのではとみる。 「学校にとって調査書は『普段の学校生活での頑張りを評価するためのもの』です。だから内申点を“斜線”にすることにはすごく抵抗がある。一方で、学校が“善意”でつけた内申点で、行きたい高校に行けなくなってしまうリスクがあります。不登校や発達障害など、調査書になじまない生徒に考慮した入試制度に変えていくときではないでしょうか」 調査書の問題は東京に限ったことではない。調査書の見直しを求める動きもあれば、実際に見直す自治体もある。
「不登校の子向け受験枠」山梨で始動
2023年5月、高校入試に調査書を必要としない選抜枠を求めた731筆の署名が、長野県教育委員会に提出された。出したのは、長野県茅野市の「学び舎Planus」の塾講師・村上陽一さんだ。村上さんが言う。 「今の先生は不登校に理解があって『学校だけが学びの場ではないよ』とか『つらかったら休んでいいよ』と言ってくれます。ただ、学校外の学びを選ぶと内申点がどうなるか、子どもや保護者は聞きにくい。ところが、高校受験の時期に突然、調査書として現実を突き付けられます。不登校の子には不利です。だとすれば、調査書がない選抜枠があっていいのではないでしょうか」 この署名を受けた長野県教委は調査書のあり方を見直し、2025年度入試から、調査書の「出欠・健康の記録」欄を削除する方針を決めた。こうした動きに対して村上さんは、自分たちの声が一定程度は届いたと思っている。 一方で、出欠欄だけではなく、入試の枠組み自体でもう一歩変化が必要だと言う。 「毎日学校に行き、頑張って課題を提出している子たちから見ると、『不登校の子はフリースクールなどで好きなことをやっているだけ』のようにも見えてしまう。『ずるい』という感情はどうしても生まれると思いますし、それが現実だと思います。だとするなら、公平・公正な入試を目指すため、各高校の定員の1割ほどを『内申点不問枠』にしてほしい。そうすればどちらも納得できるのではないでしょうか」