不登校の子、高校受験に調査書の壁 特別枠設ける自治体も #令和の子
コロナ禍以降、不登校の児童・生徒は大幅に増えている。文科省によると、2022年度の小中学校の不登校の小中学生は29万9048人。うち中学生は19万3936人で、中学生の17人に1人は不登校という多さだ。 そんな不登校生徒たちの不利な受験を改善しようと取り組む人たちが出てきている。
不登校の子の学習塾、不登校の調査書対策も
東京都杉並区の学習塾「にしおぎ学院」は、不登校になった子が通う塾だ。中学受験して都立や私立の中高一貫校に進学したものの、入学直後から行けなくなった子が多い。 塾長の田中勢記さんが言う。 「厳しい中学受験を経て、入学後に燃え尽きてしまった子、難関校の勉強についていけず自信をなくしてしまった子など不登校の理由はさまざまです。うつ病や発達障害で通院中の子もいます」 こうした子たちがリラックスして学び、再び自己肯定感を持てるように、にしおぎ学院では完全個室での1対1の指導と、スモールステップで授業を進める。 「もともと学ぶ意欲があり、学力が高い子が多いです。ただ、中学受験の“貯金”があるのは国語と算数の計算ぐらい。特に英語は一から勉強する必要があります」 にしおぎ学院に通う中学生の大半が、籍を置く中高一貫校を離れ、定時制の都立新宿山吹高校などに入学することを目指す。「定時制と言っても、入試倍率が2倍に迫る人気校もあり、決して楽な受験ではありません」と田中さんは言う。 調査書の内申点が低い場合、入試で1点でも高い得点をとるしかない。にしおぎ学院に通う子が目指す高校の入試科目は国・英・数の3教科だ。田中さんは生徒一人ひとりに合わせた対策プリントを作り、当日の満点を目指す。
不登校の子の受験に対し、テクニカルな助言をする教育関係者もいる。 「東京高校受験主義」の名義でXアカウントを運営する塾講師の男性は、保護者から学校に確認すべきことがあるという。男性は、都内の塾で教えるかたわら、不登校の保護者約100人が情報交換するチャットも運営する。「消極的な方法ですが」と前置きしたうえで言う。 「保護者には、調査書の内申点を“斜線(測定不能)”で記述してもらえるか、中学校の先生に確認するように助言しています。なぜなら、私を含む塾講師たちのこれまでの調査から、東京の都立高校では入試で得点がとれる子については斜線の場合、入試得点をもとに調査書点を出してもらえることがわかっています。ですので、テストが得意な子が斜線の内申点であれば、オール1やオール2の低い内申点がつくよりも入試選考に有利になる可能性が高いです」 実際にはどうなのか。確認すると、都教育庁は「調査書の“斜線”は、出席日数が少ないため、参考にできる資料などを活用しても、評価を行えないと中学校長が判断した場合につけるものです。保護者や生徒からの依頼に基づき、記載されるものではありません」との立場だ。 とはいえ、取材の過程では「中学校の先生から、斜線か内申点をつけるかどちらがいいか聞かれた」と話す不登校の生徒や保護者が複数いた。都の方針はあるとしても、実際には学校や教員によって対応が異なるのだろう。