不登校の子、高校受験に調査書の壁 特別枠設ける自治体も #令和の子
小中学校で不登校の児童・生徒は29万9048人(2022年度)と過去最多になった。そうしたなか、中学校の調査書に目が向けられだしている。不登校の子の多くは、定期テストや授業を受けていない。すると、調査書の内申点(評定)が低くなり、高校入試に際して高校の選択肢も狭められてしまうという問題があるためだ。そこで調査書が不要な特別枠を求める動きや、実際に導入する県も出てきた。不登校30万人の時代、不登校の受験生や保護者はどんな問題に直面しているのか。不登校の受験生の保護者や、不登校だった生徒、塾講師、教育委員会を取材した。(文・写真:ジャーナリスト・国分瑠衣子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「オール3は取りたい」不登校の子が気にする調査書
東京・城西地区に住むデザイナー・石田めぐみさん(仮名、30代)はこの春、中3になったばかりの娘の七海さん(仮名)からこんな決意を聞いた。 「成績でオール3は取りたい。だから、絶対遅刻しない」 聞いた母のめぐみさんは内心、「大丈夫かな」と思った。七海さんは長期にわたって、不登校だったからだ。
七海さんはもともと西日本の公立小に通っていた。小5のときに担任教師とのトラブルで不登校になった。小6で都内の公立小に転校、中学は公立校に進学したが休みがちだった。理由のないルールを押しつけられるのが苦手で、忘れものや忘れごとが多い。注意欠如・多動症(ADHD)の傾向がある。 今年、中3になり、高校受験を控える受験生となった。いま七海さんが目指しているのは定時制の都立高校だ。都心にあるその学校は、朝から夜まで登校時間を選べる4部制で、大学受験では国公立大や難関私大の合格実績も高い。「定時制のトップ高」(塾関係者)だ。 七海さんは中1の終わりから、不登校に理解がある個別塾に通い、勉強で後れをとらないようにしてきた。一方で、受験について気がかりなことがある。中学からの調査書だ。中1と中2は定期テストをほとんど受けられず、内申点は1か2だったとめぐみさんが言う。 「東京の都立高校の入試では、中3の1学期と2学期の成績が高校に送られるようです。だったら、調査書ではせめて(多くの教科で内申点5のうち)3は取りたいねって。それで、七海は毎日学校に行って、テストも受けると決めたようです」 そう決めてから七海さんは生活改善に取り組んだ。それまで昼夜逆転の生活だったが、夕方5時から12時間ぶっ通しで寝て、朝早く起きるようになった。生活リズムを整えると、4月から休まず中学校に通いだした。