大学入学共通テスト「情報」出題の最新事情
2024年6月14日と15日、大阪で教育関係者向けの総合展示会「New Education Expo 2024 大阪」が開催された。2日目のセミナー「大学入試の教科『情報』対応、何が必要なのか、どう進めるのか」では、京都精華大学 メディア表現学部 教授/デジタル人材共創連盟 代表理事 鹿野利春氏、河合塾 教育研究開発本部 本部長 富沢弘和氏、鹿児島県立鶴丸高等学校 教諭 春日井優氏が登壇。2025年1月に迫った大学入学共通テストでの教科「情報」出題の最新情報や学校側の対応などについて紹介した。 発表資料をもっと見る 最初に、進行役の日経BP 中野淳 技術プロダクツユニット長補佐が、教科「情報」の大学入試に至る経緯を概説した。国立大学協会は、国立大学では大学入学共通テストでの教科「情報」の受験を原則とする方針を示している。中野ユニット長補佐は、当時自ら執筆したニュース記事を基に、国立大学協会は2002年時点でセンター試験での教科「情報」の出題には慎重な立場だったが「この20年でICTと社会の関わりが大きく変わって現在の動きとなった」と解説。実際に出てきている課題と教員の苦労を踏まえ、学校はどう入試への対応を進めていけばよいのかと議論の目的を提示した。 続いて、京都精華大学教授の鹿野利春氏が登壇。「情報科入試の導入、現状、将来」と題し、高等学校の教員や文部科学省の高等学校情報科担当の調査官として勤務した経験も踏まえ、情報Ⅰと情報Ⅱが大学入試に導入される経緯から将来まで、多面的に解説した。 まず導入については、中央教育審議会での議論の流れを紹介した。2012年の段階で大学入試において既に入試を変えていこうという考え方があり、それに向けて高大接続(高校と大学の教育内容の接続)、入試の方向性が議論され、学習指導要領への議論へと発展した。当時考えられた「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は実現しなかったが、その中で評価の中心とされた思考力・判断力・表現力の考え方が生まれたという。この流れは現在の情報Ⅰ、情報Ⅱへとつながった。 大学入学共通テストにおける情報の問題には、情報Ⅰはもちろん、小学校からの学習の積み上げも範囲に入ってくる。「中学校で学ぶ四分位数やヒストグラムといった簡単な統計的な考え方も普通に出題される」(鹿野氏)。 続いて鹿野氏は情報科入試の現時点の状況を解説。ちょうど今は3年生向けの受験直前問題集が各出版社から続々と発売されているタイミングだ。しかし、これを解けば大丈夫ということではなく、「大学を受験しない生徒にも力を付けるには総合的な探究なども含めて各教科でも扱う必要がある」と、カリキュラムマネジメントの重要性を説いた。 これからの流れについても言及した。大学入学共通テストを現在主流の5教科7科目で導入している大学の多くは、情報を含んだ6教科8科目に移行すると鹿野氏は見ている。また、2023年度に組まれたDXハイスクールの補正予算を使って情報Ⅱの授業を始める高校も増えるという。それを受けて大学入試の個別試験では、情報Ⅱに関する試験を行う情報系の学部が増えると鹿野氏は考えている。