大学入学共通テスト「情報」出題の最新事情
模擬試験ではプログラミングの得点が伸びず
富沢氏は最後に、河合塾が実施している模擬試験から見た傾向を紹介した。河合塾は年5回、最大30万人が受ける「全統共通テスト模試」を実施している。共通テストに対応しており、2024年1月より「情報Ⅰ」を出題している。傾向として言えるのはアルゴリズムとプログラミングの得点が低いこと。出題は大学入試センターの試作問題を分析して作ったオリジナルだが「作問した講師の意見では、想定していたより点数が低かった」(富沢氏)とのことだ。 もう一つの特徴は、この情報Ⅰの試験を既卒生の14.5%が受験しており、平均点は現役生よりわずかに良かったことだ。予備校によっては既に旧情報を取り扱わなくなっているところもあり、その影響も考えられるという。
高等学校の現場から受験に向けた実態を報告
最後に登壇したのは、鹿児島県立鶴丸高等学校 教諭の春日井優氏だ。鶴丸高等学校は現役生と既卒生合わせて200名以上が国公立大学に進学している。大学入学共通テストへの関心が高い学校で情報科を担当する教員の立場から、学校の現場での対応状況を紹介した。 春日井氏はまず、受験する側の視点で大学入学共通テストについて説明した。生徒が目指す大学によって情報の配点が大きく異なるため、一律にどの程度の時間を割いたらよいかが指導しづらい状況にあるという。情報への配点が低いあるいは配点しない大学を目指す生徒でも、教養として必要な科目であることや、浪人を覚悟する生徒なら翌年以降の配点が高くなる可能性も考慮し、それなりの時間は割くように指導しているという。 次に「共通テストで問われること」と題し、大学入学共通テストの試作問題について、情報科の教員としての分析を披露した。問われる内容は「新学習指導要領で示されている情報Ⅰの理念通り」というのが春日井氏の見解だ。指導要領にある目標のうち、「情報社会と人との関わりについての理解」「情報と情報技術を適切かつ効果的に活用する力」の2つが出題に向いており、「試作問題もその流れに基づいて作られている」(春日井氏)。 一つ注意したいのは、使っている教科書によっては、載ってない知識を前提とした設問があったことだ。こうした設問では前提となる知識の説明文が用意されているが、授業でやっていない内容の場合は、その場で読解して解く力が求められることになる。