共働きのほうが離婚しても困らない、夫婦関係も対等 厳しい社会を生き抜く学生の価値観
共働き世帯と専業主婦世帯の割合が逆転する時代に育った今の学生たちは、“経済面でも精神面でも自立を”と考えている。そんな中、女性の働き方を左右する「壁」をめぐり変化も。AERA 2024年11月25日号より。 【図表を見る】「女子学生が希望する世帯スタイル」はこちら * * * 都内の企業で働く30代女性は、結婚5年目になる夫の収入も貯金額も聞いたことがない。もちろん夫も女性の収入を知らないはずだという。 「このくらい稼いでいるんだろうなと想像はできますが、きちんと話したことはありません。毎月決まった額を共通の口座に振り込んで、それ以外は自由に使っています」 ファイナンシャルプランナーでキャリアコンサルタントの氏家祥美さんは、大学生の間でも自立の価値観が広がっていると感じている。氏家さんが講師を務める女子大学では、学生25人のうち「専業主婦になりたい」と答えたのは2人だけ。残りの学生は、「一時的になりたい」「なりたくない」できれいに分かれたという。 「今の時代にまったくの専業主婦ではいられないと金銭面の不安を感じているようでした。万が一、離婚になっても困らないし、そのほうが夫婦関係も対等なんじゃないかと話す学生もいました」 こうした声から、学生たちが時代の変化をつぶさに感じ取っていることがわかる。一方で、親世代の子育てに縛られているケースもあるという。氏家さんは言う。 「『母親が家にいなくて寂しかったから』という理由で専業主婦になりたいと話す学生もいました。ただ、そのイメージがつくられたのは20~30年前の自分の記憶です。社会も変わり、経済的にも先行きは明るくありません。若い人たちにはそういった時代背景を学んで、自らの選択肢に役立ててほしい」 女性の働き方を左右する「壁」をめぐっても変化が起きている。 会社員や公務員の配偶者が一定の年収を超えるまでは自ら保険料を支払わなくても老後の国民年金を受け取れる制度に「第3号被保険者制度」がある。21年度末時点で第3号の被保険者は763万人で、うち98%を女性が占める。日本労働組合総連合会が第3号の廃止を提案する方針を固めたことも注目されている。氏家さんは言う。 「昔よりアルバイトの時給もはるかに上がっているのに、配偶者控除の基準額が昔とほとんど変わっていません。扶養の壁をなくせば労働力も増えるし、男性の負担も軽減されるのではないでしょうか」