アギーレJが取り戻したギラギラ感の背景にあるものとは?
アギーレジャパン発足後で全5試合に出場しているFW岡崎慎司(マインツ)が、試合後に発した何気ないひと言がすべてを物語っていた。 「みんなギラギラしたところがありましたよね」 これまでの4試合と、ワールドカップ・ブラジル大会にも出場した北中米カリブ海のホンジュラス代表を愛知・豊田スタジアムに迎えた14日の国際親善試合との違いが、岡崎によれば「ギラギラ感」となる。FW豊田陽平(サガン鳥栖)との交代でベンチに退くまでの63分間、3トップの中央で相手の最終ラインの裏を狙い、体を張り続けた28歳はこう続けた。 「攻撃パターンや戦術といったものは対戦相手によって変わってくると思うけど、今日みたいなアグレッシブな姿勢といったものはこれからも変わらない」。 先発メンバーのうち、FW武藤嘉紀(FC東京)を除く10人をワールドカップ・ブラジル大会の代表が占めた日本のメンバーは何に対してギラギラしていたのか。あらためて言うまでもないだろう。 ホームでの内容を伴った勝利。これまでの4試合で巣食った停滞感を吹き飛ばす一挙手一投足。そして、日本代表選手が背負うべき誇り。これらをプレーで体現したのが、アギーレ監督体制下では初出場となる両MF、34歳の遠藤保仁(ガンバ大阪)と30歳の長谷部誠(フランクフルト)だった。 前半9分。DF吉田麻也(サウサンプトン)の先制点につながる左CKを蹴り、6対0の大勝劇の幕を切って落としたのが遠藤だった。ニアサイドを狙った鋭いボールは、飛び込んできた岡崎の頭でコースを変え、相手GKの手をかすめた末にファーサイドにいた吉田の眼前に転がった。 10日から愛知県内で行われた短期合宿で、幾度となく遠藤がニアに蹴ったCKに岡崎がダイブする形が試されていた。さかのぼれば、一緒に代表でプレーするようになって6年以上の歳月が経過している。「ボールが来ることはわかっていた」と岡崎が以心伝心を強調するのもうなずける。 前半41分には相手のパスを読んだ長谷部が、鋭い出足から前方へ大きくクリア。ボールは前線に残っていたFW本田圭佑(ACミラン)への絶好のパスとなり、相手GKとの1対1から2点目が生まれる。3分後には相手ゴール前の混戦から本田が出したパスに対して、ペナルティーエリアのやや外側から遠藤が右足を一閃。ダメ押しとなるミドルシュートが豪快に突き刺さった。 遠藤も長谷部も、岡田武史元監督時代、そしてアルベルト・ザッケローニ前監督時代とは異なる未知のポジションで約5カ月ぶりとなる代表戦のピッチに立っていた。遠藤はガンバでも慣れ親しんだボランチから一列前へ上げて、香川真司(ドルトムント)とインサイドハーフを組んだ。 「真司も自由に動く、というタイプなので、スタートポジション以外は形を決めずにやりました。初めて並んでプレーした割には、スムーズにできたと思います。個人としては前線へ飛び出すタイミングやビルドアップへの参加などで微妙なバランスが必要になってくるので、そのへんを注意しながら。あとは攻守の切り替えと、できるだけ自分が高い位置にいて相手を下げることは意識しながらやりました。ゴールは本田が自分をよく見てくれたので。自分でも珍しいゴールだと思います(笑)」。