「多額の未払い金があります」と突然通知、おひとりさま高齢者だった“疎遠なおじ・おば”からの相続リスクとは
結婚して家族を持たない「おひとりさま」のライフスタイルや消費行動が注目されるようになって久しい。今後急増すると見られているのが「おひとりさま高齢者」の相続問題だ。相続の現場では既に、甥(おい)や姪(めい)に当たる人物が、生前ほとんど交流のなかった「おひとりさまのおじやおば」の相続人となるケースが増えてきているという。相続で引き継ぐ対象には借金などの負債も含まれる。相続人・被相続人双方にとって望ましくない“疎遠なおじ・おば”からの相続リスクを回避するにはどうしたらいいのか。民間サービスや行政の動向を追った。 【写真】静岡市は「終活」の支援業者を認証する取り組みを始めた (森田 聡子:フリーライター・編集者) ■ 遺産を「もらえる」相続ばかりではない 「叔父様が当施設で永眠されました。ついては、あなたに相続人としてお手続きをお願いします」 遠方の聞いたこともない高齢者施設から突然封書が届き、そこにはこう書いてあった。 筆者の仕事関係の40代男性が昨年、実際に体験したことだ。 男性の叔父は生涯未婚で遺体の引き取り手がなく、戸籍を調べて唯一の肉親である兄が既に亡くなっていたことから、その長男に当たる男性に連絡が行ったようだ。とはいえ、亡父と不仲でほとんど交流のなかった叔父とは、40年近く前の小学生時代に数回会ったきりだった。 消息も知らない叔父の死と相続の知らせ。それだけ聞くと、「巨額の遺産が転がり込んで人生が好転!」という映画や小説のような展開を思い浮かべる人もいるかもしれない。 しかし、現実はそう甘くはない。
■ 慌てて相続放棄の申し立て 叔父は施設に100万円単位の未払い金を残して亡くなったらしいことが分かり、慌てて司法書士に相談して家庭裁判所に相続放棄の申し立てをしたという。 「叔父には申し訳ないけれど、父からそれほど多くの遺産を受け継いだわけではないし、我が家の家計に叔父の借金を穴埋めする余裕はなかった」 男性にとっては正直、迷惑以外の何物でもなかったのだろう。 ただ、既に火葬を済ませていた叔父の遺骨をそのままにしておくわけにはいかず、祖父母が眠る田舎の共同墓地に納めた。施設の人からは、「遺骨を引き取ってもらえただけでもありがたい」と感謝されたという。 ■ 今の相続人世代は、相続の機会が増える 相続を扱う大手金融機関の専門家は、近年、男性のように生前ほとんど交流のなかった親族の相続に直面するケースが目立つと話す。 「現在の後期高齢者は相対的にきょうだいの数が多かった。中には未婚の人も一定数いるので、その人が亡くなった時には甥や姪に当たる人が相続人を務めることになる。少子化で相続の数は減少すると言われているが、こうしたことから、今の相続人世代は逆に相続を体験する機会が増えている」 中には相続人と生前全く交流がなかったり、故人が負債を抱えていたりするケースも少なくない。この専門家は、「近年相続放棄が急増している要因の1つに、こうした“疎遠なおじ・おば”からの相続の増加がある」と指摘する。