オフィスで簡単にできる 室伏広治氏に肩こり、腰痛、猫背改善のエクササイズを教わった
職場で長時間パソコンと向き合ったり、自宅でスマートフォンをいじり続けたりして、肩こりや腰痛に悩まされる人は多い。症状を改善するため、オフィスでも簡単にできる運動を提案しているのがスポーツ庁の室伏広治長官(49)だ。身体機能を部位ごとに簡単な方法で把握し、それぞれの問題を改善するためのエクササイズを独自に開発。「科学的なエビデンス(根拠)としても、早い人は2週間で効果が出る」と語る室伏さんに、具体的なやり方を教えてもらった。 【動画で見る】器具も使わず、短時間で簡単にできる肩こり対策のエクササイズ ■手術せずに腰痛改善、再びメダル 室伏さんが提唱するのは、まず身体の部位がどれだけ動くのか個別にチェックし、それぞれふさわしい改善運動を「気が向くときに無理なく行う」ことだ。 肩や腰に痛みを感じても、原因は身体の別の部位にあることが多いという。「健康は内科系の消化器や循環器、呼吸器などだけでなく、身体の外側にある『運動器』の状況にも左右される。例えば首や肩甲骨、背筋、腰回りの動き方。これらの状態が複雑に絡み合い、機能に問題がある部位と遠いところで痛みを感じることもある」 室伏さんは2004年のアテネ五輪で、陸上男子ハンマー投げの金メダリストとなった。しかし、その直後から身体機能の衰えを感じ始め、08年の北京五輪後には腰痛などを発症。整形外科医には椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、股関節唇損傷と診断され、再び五輪の舞台に立つことすら危ぶまれた。 この窮地を救ったのが、運動器の機能評価(身体の動き)をもとに、身体の個々の機能の状況を把握し、その機能の低下に対応する治療やエクササイズを介入する手法だった。米国のスポーツ専門の理学療法士らの助言も踏まえて取り組んだところ、症状は手術もせずに改善した。12年のロンドン五輪への出場だけでなく、銅メダルまで獲得できた。 ■95歳でも効果 室伏さんは現役引退後、スポーツ科学の研究者としても研究を重ね、独自のツール「KOJI AWARENESS セルフチェック+改善エクササイズ(室伏メソッド)」を完成させた。スポーツ庁のホームページでは、身体の機能を部位ごとに測る11編のセルフチェックと、それぞれの症状に合わせた改善エクササイズを動画で公開している。いずれも室伏さんが実演しているが、どれも特別な器具を使わず、短時間でできるものばかりだ。 室伏さんは「アスリートだけでなく、一般の方にも有効だ。95歳のお年寄りもチャレンジし、効果を感じてもらったこともある。少しずつでも取り組んでいけば、階段を登りやすくなったり、車を運転する際に後ろを見やすくなったりできる」と勧める。