「板倉」が飢餓を、「石棒」が世界を救う!? 岐阜・飛騨市で見た先人の知恵【第4回】
飛騨の山と聞いて、「高野聖」の旅僧のように何か妖艶で未知なるものに出会うんじゃないかと期待していたが、まさか石棒だったとは。しかし、石棒愛が止まらず語り続ける新人学芸員の2人と、その横でぐるぐる回る石棒を交互に眺めていると、「もしかしたら、1万数千年の眠りから覚めた石棒の力で、飛騨の魅力が全国に広がってくのも夢じゃないかも」と思えてくる。 薬草料理に取り組む人々や古川のやんちゃ男、朝市に朴葉寿司づくり、野草畑と薬草茶、種蔵の板蔵文化、そして石棒を愛する宮川の人びとなど4回にわたって飛騨市のあれこれをご紹介してきたが、この地の旅は「こうであるだろう」という予想が次々と気持ちよく裏切られる。どこに行っても意外性に満ちている。それは飛騨の人が自分の力で考え、年齢を経てなお生きることを楽しんでいるからだろう。人の心に触れ、旅らしい旅ができる町、それが飛騨なのだ。ぜひ足を延ばしてみてほしい。 取材・文・写真/白石あづさ