益子直美さんが主催するスポーツ大会「監督が怒ってはいけない大会」。子どもたちの成長に本当に必要な指導とは?
益子さんが理由をたずねると「スポーツマンの意味が分からないから、手を挙げられなかった」「運動が苦手だからスポーツマンとは名乗れない」といった声がありました。 そもそも、スポーツマンとはどういう意味なのでしょうか。これには監督やコーチ、保護者も答えられません。 それを受けて、益子さんは話し始めます。 「日本のスポーツの現場は勝利至上主義過ぎます。だからスポーツマンにも強さや勝つことばかりが求められてしまう。でも、この大会ではそんな日本の定義は採用していません。ここで採用しているのはスポーツの発祥の国であるイギリスの定義、『スポーツマンとは、仲間を大切し、他人から信頼される格好いい人』です」 「スポーツにおいて格好いい人とは、他者にリスペクトを持てる人のこと。たとえ試合に負けたとしてもイライラしたり、相手の悪口を言ったりしない。また、マナーを守らなかったりする人も当てはまりません。スポーツの技術だけではなく、人間的に成熟していることが大切なんです」 そんな話を聞いた子どもたちからは、「後輩にやさしくして、プレー中もたくさん声がけをします」「相手のプレーも褒めて、自分と相手のチームを高め合っていきたい」といった宣言がなされました。 その後、参加する子どもや監督たちにリラックスしてもらうために、チーム対抗リレー走や、指導者によるバレーボールを使った的当てゲームなどのレクリエーションが開催されました。
プレー中のミスは子どもたちにとってのチャレンジ
子どもたちがレクリエーションで白熱している最中、場所を変えて行われたのは監督やコーチに向けた「アンガーマネジメントセミナー」です。 「アンガーマネジメント」とは、1970年代にアメリカで生まれたとされる、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニングのこと。集まった監督たちに向けて、益子さんは選手時代のことをこう振り返ります。 「私は監督に怒られるのが怖くて、バレーボールを心から楽しんだことがありませんでした。指導者に皆さんには、選手たちを萎縮させるのではなく、もしも子どもたちが良いプレーをしたらハイタッチしてあげたり、コートの中に入っていって褒めてあげたりと、どんどん勇気づけてあげてほしいんです」