自工会など自動車5団体による新春賀詞交歓会 自工会 片山正則会長「日本の自動車産業には一層の推進力、元気玉が必要」
日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会、日本自動車販売協会連合会の自動車5団体は1月7日、「令和7年新春賀詞交歓会」を都内で開催した。 【画像】自工会 会長 片山正則氏 新春賀詞交歓会では主催5団体を代表し、自工会 会長の片山正則氏(いすゞ自動車 代表取締役取締役会長CEO)があいさつを行なうとともに、経済産業大臣の武藤容治氏、国土交通大臣の中野洋昌氏が来賓を代表して登壇した。 各人のコメントは以下のとおり。 ■ 自工会 会長 片山正則氏 皆さま新年あけましておめでとうございます、日本自動車工業会会長の片山でございます。自動車5団体を代表いたしまして新年のごあいさつを申し上げます。 武藤経済産業大臣、中野国土交通大臣をはじめとしいたしまして多くの方々にご臨席を賜り誠にありがとうございます。新たな1年の始まりを皆さま方とご一緒できることを感謝申し上げます。 私が日本自動車工業会の会長職を拝命いたしまして1年となります。これまでの多くの皆さま方のご協力を得ながら日本の自動車産業が成長するための活動をしてまいりました。改めましてこの1年間の皆さまのご協力に感謝を申し上げるとともに、引き続き日本の自動車産業の発展のために尽力してまいりますのでご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。 昨年12月25日、鈴木修氏がお亡くなりになりました。日本自動車工業会の理事として半世紀近くの長きにわたりわが国の自動車産業の発展に尽力されてこられた鈴木修氏の功績を偲び、謹んで哀悼の意を表したいと存じます。 さて、昨年を振り返りますと年明早々の能登半島地震により甚大な被害が発生し、現在も不自由な避難生活を余儀なくされている方々がいらっしゃいます。1日も早い復旧復興に向けて自動車業界といたしましても支援をしてまいります。一方、日本自動車工業会では会員企業による下請け法違反や型式指定制度の不正など、あってはならないことが起きてしまいました。業界全体で再発防止に全力で取り組む、そして1日も早くすべての関係ステークホルダーの皆さまのご信頼を回復するとともに努めてまいりたいと思います。 世界に目を向けますと、国際情勢の混沌とした状況の深刻さが増すなか、日本をはじめ各国地域の公共政策を左右する世界的な選挙イヤーでもありました。各国で新たなリーダーが誕生しており、今後は通商産業政策の面でもますます厳しい局面を迎えることが懸念されます。 そして生活面ではAIの進化に象徴されるように技術の革新が生活やビジネスに大きな恩恵をもたらす一方で、技術の革新が作り出す負の側面をコントロールする力も求められております。国内では少子高齢化、労働力不足、自然災害といった社会課題がより一層深刻さを増し、さらに働き方や価値観など生活ニーズの多様化も加速しております。 私たちは混沌とした世界に突入しつつあり、未来や暮らしを守っていくためにはどのような状況においても柔軟に、しなやかにさまざまな課題に対応していく必要があると考えております。そのためには国としての経済力、産業全体の競争力をかつてないほどの努力を持ってさらに高めていかなければならないと思っております。 自動車産業界においてもカーボンニュートラル、そしてCASE、MaaSの対応など事業環境はダイナミックに変化しており、技術革新の大波に直面しております。そして新たに多くのプレーヤーが自動車市場に参入し、企業単位での生存競争が熾烈になっております。このようにわれわれを取り巻く環境は非常に厳しい状況ではありますが、日本の自動車産業は社会への貢献を最優先とし、新たな産業基盤の構築に向けて全力で取り組んでまいります。それは他産業を含めた産業界全体の皆さまのご協力があってこそ成し遂げられるものであり、そうした思いが経団連モビリティ委員会の発足へとつながりました。 そしてこの経団連モビリティ委員会が優先して取り組むテーマを7つの課題と定め、他産業の皆さまとともに具体的な取り組みを進めていきます。一方で7つの課題を定めた当初に比べ、環境変化のスピードも上がってきております。そのために日本の自動車産業には一層の推進力、いわゆる元気玉が必要であり、そのエネルギーの源が社会の皆さまからの応援と大局を見たご理解にほかなりません。 そこで今回、私どもの描く未来の姿と希望を皆さまにご理解いただくことを目指し、自工会ビジョン2035を作成いたしました。この自工会ビジョン2035では、自動車産業を取り巻く環境課題を再整理し、自動車産業がモビリティ産業として促す未来の姿への理解を深めていただき、皆さまと希望を共有させていただくことを目指しております。社会や生活者を中心に据えたモビリティ産業の展望についてご理解いただき、その結果としましてより多くの皆さま方と今回描いた未来に向けて歩んでまいりたいという思いを、そしてより多くの方々と同じ夢を抱き、われわれ産業界がその実現に向けて責任を持って取り組むことにより、日本をより良い社会にしていきたいという思い。この自工会ビジョン2035はそのような自動車メーカー14社、そして日本自動車工業界の強い思いが込められております。 そして今年は多くの皆さまにモビリティの未来を感じていただくショーケースでありますジャパンモビリティショー2025を開催いたします。昨年は未来のモビリティ社会をさまざまな産業界の皆さまと一緒に作り上げていきたいとの思いから、新しい取り組みとしてビジネスイベントのジャパンモビリティショー ビズウィーク2024を開催し、スタートアップ企業の皆さま方145社、そして事業会社58社にご出展をいただき、ビジネスマッチングは866件に上りました。今年のモビリティショーではオールジャパンで作り出す日本の未来にワクワクできるイベントを目指してまいります。 なお、本年は自動車税制抜本見直しの結論を出す極めて重要な1年となります。自動車ユーザーの皆さまの納得が得られる、そして新しい時代にふさわしい自動車税制の確立を目指して取り組んでまいります。皆さま方のご支援をお願い申し上げます。 私たちは引き続きさまざまな産業の皆さまと手を携えて未来に求められるモビリティとは何かを模索し、業界一丸となってチャレンジし続けることでこの大変革期を乗り越え、持続可能なモビリティの未来を築いてまいりますので、引き続きご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 ■ 経済産業大臣 武藤容治氏 本日は自動車5団体の賀詞交歓会にお招きいただき誠にありがとうございます。昨年は能登半島地震をはじめ、台風や豪雨など自然災害に多く見舞われた1年でありました。被災された方々に改めて心よりお見舞いを申し上げます。自動車業界の皆さまにおかれましては、被災地への電動車の貸与、あるいは車両のご寄付など多大なるご協力をいただきました。改めて御礼を申し上げたいと思います。経済産業省としましても復旧・復興支援に向けて引き続き全力を尽くしてまいります。 昨年は30年ぶりの高水準の賃上げ、あるいは設備投資、史上最高水準の株価、名目GDP600兆円を超える、このような国内経済に明るいニュースの兆しもあった1年でもありました。ただ、一方で消費は力強さを変えております。賃上げも地域や業態によってばらつきがあります。地域の中堅中小企業を含めて継続的な賃上げを実現し、好循環を定着させることができるのかどうか、2025年はまさに正念場の1年だと承知をしております。昨年、策定いたしました総合経済対策、あるいは補正予算を総動員し、前向きな流れをしっかりと継続拡大をさせてまいります。 自動車業界の皆さまにおかれましては、賃上げ、設備投資、価格転嫁などの面で積極的な取り組みを今後ともぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。 世界に目を向けると、今年は米国で新政権が誕生します。強固な経済関係は二国間関係の土台をなすものであります。特に投資については安心して日本企業が判断できる環境を整えていくことが重要であります。米国の新政権にはまずこの点をよく伝えながら、日本の国益に資する形で日米の経済関係を一層発展させたいと思っております。 昨年はDXやGXの進展に対応しました新しい政策展開を打ち出した1年でもあります。半導体につきましては、2030年までに10兆円以上の公的支援を行なう新しい枠組みを策定しました。諸外国が大胆な支援策を講ずる中、わが国も数年にわたって大規模に設備支援できる枠組みを整えました。この枠組みを最大限活用し、生成AI、社会課題解決に不可欠な半導体の供給体制を強固にしてまいります。 昨年末には第7次エネルギー基本計画案とGX2040ビジョン案を取りまとめたところです。DXやGXの進展に伴い、電力需要増加が見込まれるなど脱炭素電源の確保が国力を大きく左右する状況であります。現実を見据え、再エネも原子力も最大限に活用する脱炭素電源を新しい起爆剤にするといった方針を示させていただきました。今年はこの新しい方針のもとで1つでも多く具体的な進捗をお示しさせていただきたいと思います。 自動車産業は脱炭素化、デジタル化への対応が競争力を大きく左右する傾向が年々強まってまいりました。先ほど片山会長からもご紹介がありました自工会ビジョン2035は、こうした一層スピードを増す状況変化、あるいは課題を正面から捉え自動車専用として目指す未来の姿を示されたものと理解をしてます。政府としましても、DX/GXの両軸でわが国の自動車産業の競争力を高められるよう全力で支援をしてまいります。 GXにつきましてはわが国のサプライチェーンの強みを生かし、EV、水素、合成燃料といった多様な選択肢、いわゆるマルチパスウェイを追求することが基本方針であります。EVや蓄電池の製造基盤の整備、購入補助や充電インフラ支援を通じた電動車の市場形成、燃料電池や合成燃料の技術開発支援などを着実に進めてまいります。マルチパスウェイへの考え方について、G7やCOPなどの機会を通じ、国際的な浸透も図ってまいります。 DXについては発展しつつあるSDVについて、グローバル販売台数における日系シェア3割の確保を目指したいと考えております。自動運転技術の社会実装、あるいはデータの利活用促進など、官民の協調的な取り組みをスピード感を持って進めてまいります。 車体課税の抜本見直しは、昨年末の税制改正大綱で基本的な方向性は示されましたけれども、今年が勝負の1年となります。業界の皆さまとともに新しいふさわしい税制を作り上げてまいりましょう。 いよいよ本年4月13日から大阪・関西万博が開催されます。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし、世界中の来場者を出迎え、未来社会の実験場として最先端分野を発信、社会実装する貴重な機会です。ぜひこの一大国際イベントを一緒に盛り上げてまいりましょう。今までも大変なご協力をいただいておりますけれども、チケットも多くの方にお買い求めいただいていると思いますけれども、いま一度お披露目いただければ大変心強いばかりであります。 今年の干支は乙巳(きのとみ)でございます。“きのと”は新たな芽吹きや成長の始まりの意味、“み”、すなわち蛇は脱皮を繰り返して成長することから再生を象徴するそうです。日本経済についても芽吹き始めた明るい兆しを大切に育て、30年にわたる停滞から脱皮し、新しく再生する。そんな1年になりますことを祈念しております。 ■ 国土交通大臣 中野洋昌氏 令和7年の新年を迎えまして慎んで新春のごあいさつを申し上げます。本日、自動車5団体新春賀詞交歓会がこのように盛大に開催されますこと、心から喜びを申し上げる次第でございます。 現在、日本経済を支える自動車産業は台頭する海外メーカーとの国際競争、ソフトウェアやAIなどの技術革新をはじめ大きな変革期にあります。国土交通省といたしましても、自動車基準の国際化の推進とともに自動運転やカーボンニュートラル時代における新たなモビリティ社会の実現に向け、不断の取り組みを重ねてまいります。 例えば現在、国連のWP.29本会議の副議長を国土交通省の職員が務めておりますが、これはヨーロッパ以外の国から初めて選出されたものでございます。これまで以上に国際的な議論をリードすることで、日本の技術や基準をベースにした戦略的な国際基準の策定に取り組んでまいりたいと思います。 また、全国での自動運転移動サービスの実現に向けまして、今後は特に大型バスやタクシーによる高度なサービスへの支援を強化いたします。また、さらに2050年のカーボンニュートラルの実現に向けまして、関係省庁とも連携をいたしまして商用電動車の導入に対する支援を強化してまいります。引き続き、本日ご列席の皆さま方のご理解とご協力を賜りますようよろしくお願いを申し上げる次第でございます。 結びにわが国の自動車産業にとりまして、本年がさらなる飛躍の年となりますこと、またご列席の皆さま方のご健勝、ご繁栄を心よりご祈念申し上げまして新年のごあいさつとさせていただきます。
Car Watch,編集部:小林 隆
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