安野たかひろさん・黒岩里奈さんインタビュー。都知事選で実践した「ほかの候補者を貶めない」戦いかた
イデオロギーの問題とどう向き合うか 「今回反省したポイント」
―投票日に批評家の東浩紀さんによる『ゲンロン』の特番に出演されていました。そこで東さんが、行政改革や政策を進めていくうちに、安野さんはイデオロギーの問題にいつか直面するんじゃないかという話をしていました。たとえば同性婚というテーマをとっても、賛成にしろ反対にしろ何らかの意見を示すときに必ずイデオロギー性が伴うと思います。安野さんはどのように考えていますか? 安野:あらゆる意思決定に対して、そもそもイデオロギー性があるから意思決定をするのかどうかはまだわからないんですが、意思決定してきた結果を見ると何らかのイデオロギー性を見いだせる、ということはあると思います。 その意味で今回私が反省したポイントとしては、よく「右か左かわからない」と仰っていただくんですね。どっちの部分もあったと思うんです。実際に有権者の方々が戸惑うポイントとしては、自分が気になっているイシューに対してこの人はどういう決断をする傾向があるんだろうということで、右派か左派かわかる人であれば予測可能で、こう意思決定するんだろうと、ある種安心できるところがあると思うんです。 私のような新しく出てきて、過去にどういう意思決定をしてきたかわからない人は、そこがどうなるかわからない。だから怖いと思われる方が結構いらっしゃって、この問題にしっかり向き合いきれていなかった。その予測可能性を上げる作業をそんなにしてこなかったという点は反省ポイントでした。 将来的には、さまざまな問題に対して私が回答をして、安野はこの問題に対してこういう意思決定をする可能性が高いということをシミュレーションするAIをつくることができると思います。それをもとに検証可能なかたちにできたら有用なのではないかと思いましたし、そのツールがあれば、選挙中につくったモデルと選挙後の意思決定に乖離があることもわかる。そういうテクノロジーが求められているのかもということは東さんとの対談で思ったことでした。 ―なるほど。安野さんの思想が見えないかも? というのは、ちょっと気になったところだったんです。 安野:たしかに、そうですね。思想というのは、ある種ラベルで理解するということだと思っていて、わりと中道のところにいる人たちってラベルを与えづらいという問題があると思うんですよね。それゆえに支持を広げにくいという問題もまたあると思います。データポイントの構想についてはまだ名前を付けられませんが、予測可能性が高くて検証可能になるという状態をつくることができたらいいなと思ってます。