安野たかひろさん・黒岩里奈さんインタビュー。都知事選で実践した「ほかの候補者を貶めない」戦いかた
集まった声をどう取り入れるのか
―集まった市民の声のなかからどの意見を取り入れるかについては、どのように決めるのでしょうか? 安野:今回の選挙では私の責任において決めていました。今回は安野が出馬した選挙におけるマニフェストに何を取り込むかということなので、やはり私がいいと信じられるものだけを入れるべきだと思いましたし、良いと思っても責任を持って実行できないと思うものは入れるべきではないと考えました。最終的な意思決定については、ある意味シンプルに私一人の考えが反映されています。 ―それは安野さんにとっては理想のかたちですか? 安野:選挙ではそうあるべきだと思っているんですが、行政運営していくとなった場合、私が間違えることのリスクが非常に高くなるわけです。その場合は私一人で決めるのではなく、複数の意見で決めた方がいいかもしれません。 グラデーションで表すとしたら、私の独断と偏見による決定があった場合、その反対の極には有権者全員の多数決ですべて決定するというやりかたがあると思いますが、正解はこの中間くらいにあるんじゃないかと思っています。たとえば副知事(編集部注:東京都は4人まで)と知事のあいだで多数決で決めるとか、知事が拒否権を持つかたちで多数決で決めるなど、どういった方法がいいのかは今後模索しないといけないと思います。
安野さん、黒岩さんが体感した「聞く活動」の効果
―都知事選ではトラディショナルな手法に取り組まれて、都内各地で街頭演説もされていました。黒岩さんのスピーチも話題になっていましたが、AIやGitHubで集まる声と街で聞いた声に違いはありましたか? 安野:当初、街頭演説は自分の考えを知ってもらう活動として必要だと思って始めたんですが、むしろ街頭で会う方々からいろいろな質問をされたり意見をもらったりして、本当に勉強になりました。「聞く活動」としてすごく意味があったと思っています。 安野:大島に行ったとき、お話を聞くと、困っていることがあって夜飲みに行けないと。島の北部に飲み屋が集中していて、運転しないと行けないそうなんです。でも飲むと運転はできないので、自分の生活が制約されてしまう。 一方でブロードバンドのインターネットや道路が綺麗に整備されていると聞いて、たとえば大島という場所は、じつは自動運転のニーズが高いし受け入れられる可能性もあるんじゃないかと感じました。高齢の方で運転に不安があるけれども、日々の生活があるから免許返納なんてできないという方も結構いらっしゃいますし……。 ―その話はすごく聞きますよね...…。 黒岩:選挙戦においても、たくさん有用なアドバイスをいただきました。たとえば最初はどこで話していいかもわからない状態だったんですが、有権者の方にいろいろ教えていただきました。豊洲駅に行ったとしても、ららぽーと側で演説するべきなのか、別の場所なのか、全然わからなくて。 ―たしかに、初めはそうですよね。 黒岩:虚空に向かって演説しているみたいなときもあったんですが(笑)、そうすると現地に住んでいらっしゃる方から「昼間はここに人がいるから」って教えていただいて。「立川だとここがいいよ」とか、それ以外にも「こういうふうに喋ったほうが聞きやすい」とか身振り手振りの仕方とか、見ていらっしゃる方のほうが選挙のプロなので、その方々に教えていただきながら、我々の演説もちょっとずつアップデートできたという感覚があります。