安野たかひろさん・黒岩里奈さんインタビュー。都知事選で実践した「ほかの候補者を貶めない」戦いかた
「他の候補者を貶めない」というポリシーについて
―「チーム安野」は選挙活動中、「他の候補者やその支援者を貶めない」という姿勢を明言されていたことが印象に残っています。黒岩さんも「(安野さんは)システムの欠陥は見抜くけど人を貶めることはしない」とスピーチしていました。今回の都知事選だけではなく、アメリカの大統領選を見ると別の候補者を罵倒するかのような選挙戦が当たり前になっていて、それを見ているとしんどい部分もあるんですが、この戦い方にはすごく希望を感じました。 安野:これはあとから気づいたんですが、ブロードキャスト型の選挙をしていると、自分の言っていることは正しいんだという主張をせざるを得ないんだと思います。さらに、あとになって「間違っていました、アップデートをします」ということも普通はできない。そうなると、自分がいかに正しく間違っていないか、相手がいかに間違っているかというアピールをせざるを得ないんです。 安野:一方で我々は高速に聞きながらアップデートするということを掲げていました。私たちは100%正しいと思っていません、むしろ足りない部分はみんなで考えていこう、と言えた。そのアーキテクチャの違いが影響している気がします。 ―マニフェストをどんどん更新していくというスタンスと人を貶めないというところがじつはつながっているんですね。 黒岩:SNSで「安野を攻撃しようと思って安野の政策を批判しても、それは安野を助けることになる」というコメントがありました。安野への政策批判は無効化される、という…...。 ―それは思いもよらぬ観点ですね。 安野:オードリー・タンさんや、海外のデジタル民主主義の第一人者であるグレン・ワイルさんがこの都知事選にすごく着目して、世界でも新しい事例だったということを言っていただきました。ワイルさんは、デジタル民主主義の新しい波は台湾と日本から始まると言っている。社会がすごく分断されてしまったアメリカとかEUに比べると、まだ日本では分断はそこまで進んではいない。 しかもテクノロジーを使うことに対してはかなり親和的な人々がたくさんいる。こういう環境はじつはイノベーションが生まれやすいんじゃないかという議論をされていて、私はその可能性はすごくあるんじゃないかと思います。