ハイレベルのJリーグに「黒船」到来…財政力もアップして「欧州5大リーグ」に迫れるか
Jリーグと欧州との差
考えてみれば当然のことだ。こうした世界のトップリーグのクラブは財政力が豊富だから、日本人を含めて世界中から代表クラスの選手を集めて編成されているのだ。一方、日本のクラブはせっかく育てた日本人選手を次々と引き抜かれてしまうし、欧州や南米の代表クラスと契約することは難しい。 Jリーグが発足した1990年代には、日本は世界第2の経済大国であり、その優良企業がバックに付いたJリーグクラブは財政力があり、欧州クラブと競い合っていた。そのため、現役ブラジル代表選手が何人もJリーグでプレーしていた。 だが、その後、欧州ではサッカーが有料テレビのキラーコンテンツとなり、莫大な放映権料が流入。さらに、中東や東欧の資源を牛耳る大富豪や米国の投資ファンドなどから巨額の投資を受けるようになって、欧州のクラブはさらに裕福になっていった。 こうして、Jリーグと欧州との間の競技力の差は縮まったものの、財政力の格差は逆に大きく開いてしまったのだ。
RB大宮アルディージャに託されたもの
理想を言えば、Jリーグクラブが財政力を強化することによって、欧州、南米の有望な若手選手が経験を積むためにJリーグに参戦し、日本人選手は必ずしも海外移籍せずにJリーグでプレーするだけで、ハイレベルなプレーを経験できるようになることだ。そうなれば、Jリーグでもワールドクラスのプレーを堪能できることになり、観客動員数もさらに伸びるはずだ。 だが、日本の経済には30年前のJリーグ発足当時のような勢いはない。これから人口減少が予想され、経済は縮小していくかもしれない。日本国内の資金だけでは、とても欧州のトップクラブと伍していくことは難しいのだ。これはサッカー界だけの話ではなく、これからの日本は外資や外国人労働者の導入を避けて通れないはずだ。 その意味で、RB大宮アルディージャが成功するか否かが大いに注目される。レッドブル・グループが「日本のクラブへ投資することで利益が得られる」ということを証明してくれれば、中東マネーや投資ファンドなどもJリーグに、あるいはNPB(プロ野球)やBリーグ(プロバスケット)など他の競技に目を向けるきっかけになるかもしれない。 もちろん、彼らに牛耳られることは避けなくてはいけないから、Jリーグや日本サッカー協会によるコントロールは必要だ。それでも、レッドブル・グループという“黒船”襲来は基本的には歓迎すべきことなのではないだろうか?
後藤健生