エレクトロニック・ユニット、キアスモス(Kiasmos)が語る――10年振りの新作、そして音楽と自然の関係性について
――そういえば、7月にフランスのシストロンで行われたライブの映像を見ました。あの美しい自然と城塞の遺構に囲まれた中でのパフォーマンスは、さすがに特別な体験だったのではないですか。
オーラヴル:そうだね。あれは素晴らしかったな。山の壮大さに圧倒されて、自然の力強さを全身で感じることができた、特別な体験だったよ」
ヤヌス:特に、昼間に始まって終わったのが日が暮れるころだったから、昼の自然な光の中で演奏する時間と、夜になって照明がきらめく中で演奏する時間と、両方のエネルギーを感じることができた。昼は山の緑や空の青が僕たちの演奏に彩りを加えてくれて、夜はクラブみたいに、集まった人たちの熱気が会場を一つにしていて。確かにあれは忘れられない瞬間だったね。
ニュー・アルバムの「II」とフィールドレコーディング
――今度のニュー・アルバムの「II」は、一部がバリ島でレコーディングされたと聞きました。アイスランドとはまったく異なる環境だったと思いますが、バリ島はどんなインスピレーションを与えてくれる場所でしたか。
ヤヌス:とても楽しい経験だったよ。アイスランドや自分のスタジオとはまったく違う環境で一緒に曲を作ったのは初めてだったし、それが曲のサウンドにかなり影響したと思う。普段使っている機材もなかったからね。だから最初は戸惑うこともあったけど、それが楽しかったし、大きなチャレンジでもあった。限られた環境の中で、僕たちは音楽の原点に立ち返ったような感覚だった。自然の音を取り入れながら、手づくりで音楽をつくり上げる――それはまるで音楽的な冒険に出かけたようなもので、本当に刺激的だった。普段とは違う環境だからこそ、新しいサウンドを生み出すことができたのは大きな収穫だったよ。
――確かに、今度のアルバムからは、これまでのキアスモスのサウンドでは聴かれなかったさまざまな“音”が聞こえてきますよね。
オーラヴル:環境によって聞こえる音はさまざまで、それが僕たちの作る音楽にも大きな影響を与えている。例えば、バリ島ではコオロギの鳴き声とか自然の音がとても身近に感じられる。また、ガムランという伝統楽器もバリの音楽に独特の雰囲気を与えている一つで、今回僕たちの曲でもその音色を少し取り入れてみた。一方、アイスランドはもっと静かで、自然の音も少ない。その“静けさ”が僕たちの音楽にも影響し、より繊細で落ち着いたサウンドをつくり上げているというのはあるんじゃないかな。