エレクトロニック・ユニット、キアスモス(Kiasmos)が語る――10年振りの新作、そして音楽と自然の関係性について
――そもそも、どうしてバリ島でレコーディングすることになったんですか。
オーラヴル:妻がジャカルタ生まれで、バリ島で育ったんだ。だからバリとは深いつながりがあって。それで2017年ぐらいから年に数カ月ほど、そこを拠点に生活しているんだ。
――そうだったんですね。ちなみに、今回のアルバムで使われているフィールド・レコーディングは全てバリ島で録音されたものですか。
オーラヴル:そうだね。というか、アイスランドではこうした経験はまったくないから(笑)。実はピアノの一部をバリ島でレコーディングしたんだけど、そしたらコオロギの鳴き声が偶然混混ざっていて。ただ、それを完全に消してしまうのはかえって不自然だと思って、そのまま残すことにしたんだ。結果的に、その音が曲に独特の雰囲気を出してくれて、とても気に入っているよ。
――コオロギの鳴き声以外にも、何か面白い音は録れましたか。
ヤヌス:うん。早朝にバリの山で録音した、とても美しい音がある。「Dazed」で聴くことができるんだけど、鳥たちが目覚めていく様子と、日の出の音を録音したんだ。鳥たちのさえずりと日の出の音が重なり合って、素晴らしいハーモニーを生み出していた。その瞬間、自然と音楽が一体になったような、特別な体験だったよ。
――そうしたフィールド・レコーディングを取り入れることで、どんな効果やフィーリングを自分たちの音楽に持ち込みたいというアイデアがあったのでしょうか。
ヤヌス:いや、特に具体的な計画は立てずに、ただレコーダーを持って早朝の山へと出かけたんだ。すると、鳥のさえずりや風の音など、自然が奏でる美しいハーモニーが耳に入ってきた。その音をそのまま録音して、曲に取り入れてみた感じだったんだ。
オーラヴル:僕たちが自然の音を音楽に取り入れるのは、単に楽器の音を重ねるだけではなく、音楽にストーリー性を持たせたかったから。例えば、鳥のさえずりを加えることで、聴いている人に早朝の森の中にいるようなイメージを喚起させたり、川のせせらぎの音で穏やかな時間の流れを感じてもらったりね。楽器だけでは表現できない、自然の奥深さを音楽に表現したいと思って。それは、音楽に新たなレイヤーを加えて、聴く人に没入感を与えるためでもある。