眠りが浅いと脳はゴミ屋敷に!? 眠っている間に脳のゴミを洗い流す「脳脊髄液」とは?
世界を股にかけて活躍するハーバード大学&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行ドクターが、健康に関するあれやこれやの素朴な疑問やお悩みを最先端医学の見地から解き明かし、健やかな体と心を取り戻すための改善策をアドバイス。今回は睡眠中の脳についての質問に回答・解説してもらった。 Q. 「睡眠の良し悪しは脳の働きを左右すると聞きますが、寝つきが悪く眠りも浅いせいか、朝起きたときから頭がだる重く、脳にもやがかかっているような感じです。眠っている間に、脳の中でいったい何が起きているのか知りたいです」 A. 「私たちがぐっすり眠っている間、脳はせっせとゴミ出しをしています。眠りが浅いと脳に老廃物がたまって脳内環境はゴミだらけに。認知症のリスクも高まります」
「脳脊髄液」が眠っている間に脳をクリーンな状態にしてくれる!
起きているときも、寝ているときも、脳には1分間に700mlもの血液が集まる。それに伴って脳内には大量の老廃物が出る。脳に出た大量のゴミを洗い流してくれるのが「脳脊髄液」だ。 「脳脊髄液は頭蓋骨の中にある無色透明な液体です。脳はやわらかくて衝撃に弱いので、硬い頭蓋骨の中で脳脊髄液に包まれて保護されているんです。それはたとえるならパックの豆腐のような感じです。豆腐はつぶれないように水を張った密閉容器に入っていますよね。豆腐が脳、密閉容器のパックが頭蓋骨でその中の水が脳脊髄液というわけです」(根来教授) ただし豆腐パックの水と違い、頭蓋骨の中の脳脊髄液は掛け流し源泉のように周期的に入れ替わっているそう。日々大量に出る脳の老廃物は、循環する脳脊髄液の流れに乗って脳の外に排出され、脳表面の静脈から回収されて処理される。脳は眠っている間に脳脊髄液によって水洗いされ、クリーンな状態になるのだ。
《脳をクリーンな状態にする「脳脊髄液の流れ」》 脳脊髄液は脳室(脳の深部にある隙間)で1日に約500ml作り出され、脳表面の軟膜とクモ膜の間の「クモ膜下腔」へと流れ、脳表面と背骨の中にある脊髄(脳から続く中枢神経)を循環する。循環を終えた古い脳脊髄液は脳の表面にある静脈へと排出され、1日に3~4回フレッシュな脳脊髄液に入れ替わる。