今季限りでリーグ脱退、広島エフ・ドゥと命運を共に「このクラブがあって人生が変わった」闘将・岩田裕矢が最後まで注ぎ続ける情熱|フットサル
2018年に参入してからの7年間で三度「3位」の成績を収め、“F2の雄”と呼ばれた広島エフ・ドゥ。しかし、スポンサー企業の撤退等の理由から、2024年11月にFリーグを退会することを発表した。たくさんのファンに惜しまれながら、今シーズン限りでFリーグでの活動を終える。 【映像】Fリーグが誇る“最強”GK先制点の瞬間 それと同時に、引退を表明したのが、キャプテンの岩田裕矢だ。 大学2年生から約3年間広島でプレーすると、大学卒業後はスペインへ。その後、2022年に復帰すると、今シーズンからはキャプテンとして、メンバーが大きく入れ替わったチームを率いた。 「このクラブがあったから、今の自分がいる」「応援してくれた皆さんのおかげで、こんなにも情熱をもてる人間になりましたと伝えたい」 地域リーグの時代から広島で戦い、最後はクラブと共にFリーグの舞台から退く岩田は、合わせて6年間、闘志溢れるプレーで応援してくれる人たちに向けて“情熱”を体現し続けた。 どこまでも熱く、まっすぐにフットサルと向き合った男に、広島への思いを聞いた。 取材・文=伊藤千梅
フットサルをやってきたことに間違いはなかった
──11月に現役引退を発表されました。今シーズン限りでの引退を決断した理由を教えてください。 2022年にスペインから広島に復帰して、その時に残りのフットサル人生はあと3年くらいというのは、ぼんやりと考えていました。その期間で、スペインに行かせてもらった両親や、大学の時にお世話になったこのクラブに恩返しをしようという気持ちでプレーしてきました。 引退が具体的に決まったのは去年です。僕は今、大学時代に広島に加入した時の元監督・高垣結さんの元で、選手以外に発達障害のある子どもの運動療育の先生をやっています。今後は彼の地元である尾道に、精神に障がいのある人たちのフットサルチームを作って、日本一を目指す取り組みを行うことになりました。 彼は僕の恩師なので、一緒にやっていきたい思いもありますし、引退後は誰かのために、人のために頑張りたいなと思って、そこにシフトチェンジしようと思っています。 ──引退を決めてから、試合や練習で感じるものに変化はありましたか? 練習も1回やるごとにどんどん回数が減っていくので「時間は限られている」と常に自分に言い聞かせながら取り組んでいました。引退したらいくらでも休めるから、足がぶっ壊れてもいいというくらいの覚悟で、練習は毎回ハードに取り組んでいました。 あとは、常にフットサルのため、チームのためという気持ちは3年間ありました。スペインで学んだ戦術を、どのようにチームや若手に落とし込むかをずっと考えていましたね。 ──引退の発表には「エフ・ドゥがFリーグを退会するリリースと同じタイミングで」とありましたが、それはどのような意図があったのですか? それは僕のわがままです(笑)。本当はリーグ後半戦が始まってすぐにお知らせしようと思ったのですが、その前に18番の石川彰人が先に引退リリースを出してしまったので「もうなんしよんや」と思って(笑)。だったらチームと一緒のタイミングでと、勝手な要望を貫かせてもらいました。 ──そういう理由だったのですね(笑)。Fリーグを退会することはいつ頃聞いていましたか? リーグ後半戦が始まる前の9月くらいには聞いていました。チーム事情を詳しくは知らないですが、それを聞いた時に「やっぱりそうか……」という感覚は少しありました。 これまで30年間生きてきた中でこんなに好きになったチームはないですし、悲しい気持ちもありますが、逆に一緒のタイミングで卒業できてうれしいという気持ちもあります。まだチームがリーグからいなくなる実感がそこまで湧いていないので、終わりが近づいたら、より寂しさが募るかもしれせん。 ──広島の退会が発表されて、ボアルース長野戦後にはセレモニーが行われました。 そうですね。あの瞬間は鳴りやまない拍手のなかで、フットサルを通じて相手チームのサポーターも、みんなが一つになったと感じました。 その時に、今までフットサルをこれだけ情熱をもってやってきたことに間違いはなかったという自分の確信と、敵も味方も関係なく一つになれるスポーツは本当にすごいと思いました。