中国、新興サービス産業に期待 ネット通販やローン利用で経済構造に変化
経済成長の鈍化が指摘される中国ですが、ネット通販をはじめとした様々なサービス産業の起業が盛んです。計画経済下では後回しにされてきたサービス産業の発展が、これからの中国を照らす明るい未来の光となるのでしょうか? 今、中国に芽吹くニューエコノミーへの現状と今後の期待について室井秀太郎さんが解説します。
ネット通販が大盛況
中国でインターネットやスマートフォンを活用した新しいビジネスが盛んになっている。 中国国家統計局は2015年から消費統計の中で、インターネット通販の伸びを公表している。消費全体を示す社会消費品小売総額は、各月の前年同月比を示しているが、ネット通販の場合は、各月の年初からの累計の前年同期比を示している。毎年1月と2月は、春節(旧正月)の影響があるため、2カ月の合計を比較している。消費全体の伸びは15年から16年にかけて1割程度で推移している。その中でネット通販は15年1~2月に5割近い伸びを示した。
その後はネット通販の普及に伴って伸び率は低下したが、16年に入ってからも3割弱の伸びを維持しており、消費全体の伸びを大きく上回っている。16年のネット通販の取引額は4兆1944億元と、消費全体の12.6%を占めた。 広大な中国では住居の近くに店舗がないような、買い物が不便な地域が多い。一方、消費水準の向上と消費者の需要の多様化によって、多様な商品のニーズが高まっている。ネット通販が大きく伸びる素地はあった。ネット通販の急速な普及を可能にしたのは、インターネットやスマホが消費者に浸透したことに加え、宅配便や物流拠点などの、ネット通販を支えるインフラが整備されてきたことが大きい。消費者にとっては、店舗に行かなくても好みの商品をネット上で比較して購入し、自宅まで届けてもらえる利便性が高く評価されている。 ネット通販大手のアリババは、英語教師をしていた馬雲氏らが1999年に杭州で設立した。最初は企業間の取引を仲介するサイトを運営していたが、消費者向け通販を扱うサイト「淘宝網」で成長し、14年には株式をニューヨーク証券取引所に上場した。「淘宝網」のユーザーは5億近くに上り、サイトに出品している商品は8億件を超える。 近年、毎年11月11日の「独身の日」にネット通販で実施される値引きセールに注文が殺到し、過熱気味の状況になっている。15年の「独身の日」のセールでのアリババの成約額は912億元と、11月の消費全体の3%を占めた。