外来種のコブハクチョウ 富士山一帯定着か 清水港と河口湖の往来も確認、山梨などの調査グループ
静岡・山梨・神奈川各県の富士山一帯で近年、外来種のコブハクチョウの定着が進んでいる。山梨県などの調査グループが3日までの静岡新聞社の取材に明らかにし、清水港など静岡県で見られる個体が県境を越え往来している実態も判明した。他県では個体識別管理の体制が進みつつあり、グループはむやみに餌を与えないよう呼びかけている。 「近づいても逃げない。人に慣れていると思った」 2024年12月21日、静岡市清水区三保の三保マリーナ。東海大海洋学部博物館の学芸員野口文隆さん(51)はつがいのコブハクチョウを見つけ、グループに連絡した。足環(わ)で、毎年河口湖から冬季に飛来する個体であることが分かった。 「18年ごろからぽつぽつ新たな目撃情報が寄せられている」と話すのは、21年6月以降調査を継続するグループの一員で地域自然財産研究所(山梨県都留市)の篠田授樹さん(59)だ。
自然公園法で野生動物への餌付けが禁止されている山梨県の河口湖では近年、体長1・5メートルほどになるコブハクチョウ4羽が定住、富士河口湖町は注意喚起する。半世紀以上前から保護と育成を続け、観光シンボルにしている山中湖村でも25年2月ごろ約50羽のコブハクチョウに初めて緑色の足環を付けることが決まった。 篠田さんは「山中湖で繁殖した個体が周辺に分散し、現地で定住している可能性もある」と指摘する。 静岡県では24年10月に沼津市西浦木負に現れた雌とみられる1羽が神奈川県の丹沢湖から来たことが分かった。山梨県でも河口湖のほか精進湖にも一時現れ、神奈川県西部の酒匂川や相模川河口などでも近年新たに確認されている。 <メモ>コブハクチョウは本来欧州などに分布し、1900年代半ば以降、飼育施設のほか、湖沼や公園で愛玩用に導入された。国内のコブハクチョウは野外に放された個体が野生化した。国内では千葉県の手賀沼などにもまとまった個体がいる。山梨県の河口湖では1回の産卵で7~9個の卵を産み、繁殖力が強く、食欲が旺盛。農作物への被害など増えすぎると人間とのあつれきを生む。山中湖で放し飼いにされているコブハクチョウは、半世紀以上前に観賞用に持ち込まれたものの子孫とされる。清水港では少なくとも2014年ごろには目撃情報があるが、これまで富士山周辺では足環による生態確認は一度も行われてこなかったため、静岡県内で目撃されてきた個体がどこから来ていたのかは正確には不明。静岡市葵区の駿府城公園の堀にも一時定住し、繁殖していた。調査グループでは足環付きのコブハクチョウの情報提供を呼びかけている。メールアドレスは<kobuhakuring@gmail.com>。