「グローバルノースの大量消費を解決するためにいるのではない」 古着の最終地点ケニアのデザイナーと現状を議論
WWD:端切れ以外の服も混ざっていますね。すごい量だということが分かります。
鎌田:端切れはトラクターが定期的に回収し、ナイロビ市内の埋立地ダンドラという場所に運んでいきます。服だけでなく医療ゴミなど特殊なもの以外はほぼここに集まるため、すでにこれ以上ゴミを埋め立てられなくなっている現状もあります。ここでは見慣れたブランドの服もそのまま落ちていました。非常に真新しい服も落ちています。洗濯表示を見ると、ポリエステル由来のものが多い。日本では洗濯するときのマイクロファイバーが課題として指摘されますが、こういった形でそのまま服が河川や埋立地に入ってしまう可能性もあるんだと思いました。それからもう一つの問題が、国内産業への影響です。これはアフリカのいろんな国々が対策を考えていて、古着の輸入を禁止するところが出ていてきます。ナイロビから2、3時間離れたところの大きな工場に話を聞くと、以前はファッションアパレルがメインだったそうですが、それでは経営できないので今は軍隊の制服やガソリンスタンドなどのグローバルブランドの制服などをメインの事業として行っているそうです。もう一つ忘れてはいけないのが、非常にクリエイティブで面白いクリエイションをしている若いデザイナーが現地にはたくさんいるということ。彼らは古着を素材として扱う感覚が非常に強い。新しい生地を買って服を作るよりも、マーケットに行ってマテリアルとして古着を調達して服を作っています。また現地の適正価格で新品の服を作ると到底売れないとも話していました。適正価格であっても古着に比べると高いのでなかなかビジネスをするのが難しいそうです。こうしたクリエイティビティーの芽をつんでしまうようなことがあるのはもったいないことだなと思いました。
「他人の問題を解決するためにでは疲弊してしまう」
WWD:滞在後、率直にどんな感想をお持ちになりましたか?
鎌田:服のエンドオブライフを考える、循環の仕組みを作るという言葉を耳にすることは増えていますが、本当に服を循環させるのは非常に難しい。全然できていないと強く感じましね。アフリカにある種押し付けてしまっている部分もあると思います。衣類は混紡が多く分離して再生する技術がまだ確立されていなかったり、国内で回収して再利用する際のコストの部分だったりといった課題はありますが、そこを改善していくためには具体的な仕組みや制度を考えていく必要性を感じました。