800億円を超えるガチャガチャの市場規模、子どもから大人まで楽しめるエンターテインメント空間になった理由とは
■ 急速に進むガチャガチャ業界の海外展開 また、ガチャガチャメーカーの多くが中小零細メーカーだ。10年前では、ガチャガチャの商品は発売日が事前に公表されることがほとんどなく、店舗で偶然見つけてもらうしかなかった。 だが、SNSが普及したことで、メーカーにとって、SNSが一つの武器となっている。SNSで商品の宣伝ができることで、多くの消費者に情報を届けることができるようになったことも、ここ10年で大きな出来事だと言えるだろう。 また、ガチャガチャ業界の発展は国内にとどまらず、近年では海外展開が急速に進んでいる。 バンダイは1993年に香港で初の海外進出を果たした後、2024年時点でアジア、北米、欧州の12エリアで34店舗を展開している。海外市場では、現地の購買スタイルに合わせたサービスが導入されている。 日本ガチャガチャ協会の会長の小野尾勝彦氏に海外展開について尋ねると、「国内はインバウンド需要で賑わっているが、ここ最近、今後の市場を見据え、海外展開するメーカーも増えてきた。 ガチャガチャの機械でも、日本国内では現金が主流であるのに対し、海外ではクレジットカード対応などの機械があり、日本の買い方とは違う。その国に合わせた買い方で普及している」との見方もある。 一方で、少子高齢化という課題にも対応が進んでいる。子どもの数が減少する中で、大人向けの商品やシニア層をターゲットにしたラインアップが増えているのだ。
■ 「大人向け」を開拓したあのガチャガチャ 一つの象徴と言えるのが、キタンクラブが2012年に発売した「コップのフチ子」だ。 コップのフチ子はSNSやメディアでも注目され、ガチャガチャ市場において新しいブームを作るきっかけとなった。特に大人向けの商品としての成功例であり、ガチャガチャが子どもだけでなく幅広い層に受け入れられることを証明した商品でもある。これを機にサブカルチャー的要素を含んだ大人向け商品が増えてきた。 最近では、2023年や2024年の商品の特長として、昭和レトロ、平成レトロの商品が多く発売されている。そのほか、懐かしのアニメキャラクターや食品サンプル、ギミック(仕掛け)がある商品など、より趣味性の高く、かつ大人向け商品が目立つようになった。 また、デジタル技術と融合した例も増えてきた。例えば、スマートフォンと連携した新しい体験型ガチャガチャや、オンライン注文後に商品が自宅に配送されるサービスなど、新たな購買スタイルも登場している。 この10年間で、ガチャガチャ業界は大きな進化を遂げ、約800億円規模の市場を築き上げた。そのカプセルの中には、小さな驚きと喜びが詰まっている。これは単なる玩具ではなく、人々の生活にちょっとした楽しさを提供する文化そのものと言えるだろう。ガチャガチャ業界の未来は明るく、その可能性はまだまだ広がり続けるに違いない。(続く)
尾松 洋明