800億円を超えるガチャガチャの市場規模、子どもから大人まで楽しめるエンターテインメント空間になった理由とは
この10年でアイテム数や店舗数が急速に伸びているガチャガチャ市場。かつておもちゃ屋やスーパーの片隅に置かれていたガチャガチャ市場はなぜここまで拡大しているのか。ガチャガチャ評論家おまつ、こと尾松洋明が解説する。 【写真】今は見ることのなくなった懐かしい商品がいっぱい!ビクター ヒストリカル ミニチュア コレクション (尾松 洋明:ガチャガチャ評論家) かつて、ガチャガチャは子どもの小遣いで楽しむ遊びとして、おもちゃ屋さんやスーパーの片隅に置かれている存在であった。それが現在では、駅構内やショッピングモール、量販店の目立つ場所に並び、日常の風景に溶け込むまでに普及した。 その進化は単なる販売台数の増加にとどまらず、日々、メディアに商品が取り上げられるほど、エンターテインメント産業として新たな地位を築いたと言える。10年前と比較して、市場規模の拡大、専門店の増加、SNSの活用、そして海外展開という複数の側面で劇的な変化が見られる。 日本玩具協会によると、2023年度のガチャガチャ市場規模は640億円に達し、10年前の278億円から2倍以上の成長を遂げた。この統計には協会に加盟しているメーカーの売り上げのみが含まれているが、専門店を運営するベンダーの売り上げを加えると市場全体は800億円を超えると推測される。 この驚異的な成長の背景には、専門店の台頭がある。全国で300店舗以上の専門店がコロナ禍をきっかけに新設され、商業施設の空き店舗を活用したガチャガチャ店舗が次々とオープンしたことで、市場全体が活性化した。 ガチャガチャ専門店を運営する「ベンダー」は、メーカーから商品を仕入れ、設置場所を確保して自販機を運営する存在である。設置形態はスーパーマーケットやドラッグストアの一角に少数台を配置する「ロケーション型」と、数百台の自販機を並べる「店舗型」に分けられる。
■ 月100種類程度だった新商品の数も今では驚きの……! 10年前はロケーション型が主流で、店舗型の専門店は数えるほどしかなかった。それが今では専門店が増え、子どもから大人まで楽しむエンターテインメント空間として、新しい顧客層を取り込むまでに進化した。 商品そのものの多様化も著しい。 10年前は月に毎月100種類程度だった新商品数が、現在では500種類を超える。メーカー数も10年前の10社程度から現在では50社以上に増加している。この中には、アミューズメント業界からの新規参入企業も多い。 また、商品価格の幅も広がりを見せている。 かつて主流だった200円商品に加え、現在では300円、500円、さらには800円から2500円の高価格帯商品も登場している。特に2021年から展開しているバンダイの「プレミアムガシャポン」は、高価格帯ながら品質の高さで消費者を惹きつけ、コレクション性を重視する大人の支持を得ている。 ガチャガチャ業界の成功を支えているもう一つの要素が、SNSの普及である。 2008年に日本で開始したTwitter(現在はX)やFacebook、Instagramなどのプラットフォームで、消費者が購入したガチャガチャ商品を写真付きで投稿し、その楽しさや意外性を共有している。 このような消費者発信型の情報拡散が、ガチャガチャの魅力を広く伝える役割を果たしている。SNSとガチャガチャは親和性が高く、消費者同士の情報共有によって購入意欲をさらに高めたと言ってもよい。