「背番号1は憲志郎以外、考えられなかった」高校でトミー・ジョン手術→ソフトバンク育成指名…“投げられないエース”にチームが最後の夏を託したワケ
今年も多くの有望選手がドラフト会議に向けてプロを志し、志望届に夢を託した。その中には、高校生ながらひじのトミー・ジョン手術を受けてリハビリ中の津嘉山憲志郎(神戸国際大附)の名前もあった。そんな背景を知りながらソフトバンクが津嘉山を指名したウラには、どんな理由があったのだろうか? <全2回の後編/前編から読む> 【写真】「ど、どこから球が…?」柔軟過ぎて出所が見えない…ソフバン育成7位指名・津嘉山憲志郎のトミー・ジョン手術前“衝撃のフォーム”…実際の試合での投球風景&盛り上がった今年のドラフト会議の様子も見る 高校入学直後から150キロ近い速球を武器にしたピッチングで、プロ注として多くの球団の興味を集めた神戸国際大付高の津嘉山憲志郎。 その津嘉山が自身の身体に「異変」を感じたのは、高校2年生の8月のことだった。 「8月の終わりの練習試合で先発して、1回を投げている途中に今までにない痛みを感じて。確か、手が震えたんです。ひじのむくみみたいな感触もあったし、1イニング目だから(マウンドを)まだ降りられないなと思って、そのまま2、3イニング目を投げたんですけど、やっぱり厳しいと思って交代してもらいました」 すぐに病院で診察を受けると右ひじの肉離れと診断された。 しばらくノースロー期間を設けたのち、県大会の組み合わせが決まった後、準々決勝で対戦するであろう報徳学園戦に焦点を合わせ、調整を続けた。
右ひじの靭帯損傷…トミー・ジョン手術を決断
その報徳学園戦では先発マウンドに立つも従来のような球のキレは影を潜め、ボール先行のピッチングが続いた。3回を投げ2安打2失点で降板し、チームも2-5で敗退。ただ、しばらく様子を見ても一向に回復しないひじの診察のため再度病院に行くと、右ひじの靭帯が切れていることが判明した。 「それから病院の先生と今後のことについて話し合いました。今までにない痛みでしたし、(只事ではないという)覚悟みたいなものがあって、まずは手術をするかどうかということになりました。将来を考えた時に、高校野球だけが野球ではないという話になって手術するなら早い方がいいということになって。 親や先生とも何度も相談しました。(トミー・ジョン手術は)靭帯を強くする手術なので、悪くなる手術じゃないですし、アメリカではもうそれが日常というのも聞きました。日本ではメスを入れることに抵抗を感じている人が多いから、なかなか決断できない人もいるみたいです。メスを入れないでいいならその方がいいですが、治るのか分からない治療をして2年以上リハビリをするよりは、確実に治ると分かっているトミー・ジョン手術をして、1年半くらいかけてプロに備えていく方がいいと思ったんです」 昨秋のドラフト会議で1位指名された投手が3人、トミー・ジョン手術を決断している。 入団してリスクを背負うより、長く活躍することを考えるとプロ入り前に手術をして、高校野球を引退した時間やプロでの準備期間をリハビリの時間に充てた方がいいと考えたのだ。 ただ、高校野球は2年秋から3年夏が、最も選手の個の能力がクローズアップされやすく、進路にも大きく影響する。ましてや甲子園を目指すとなれば、2年秋、そして3年春や夏の貴重な時期も犠牲にすることになる。 「確かにそうなんですけど……それも踏まえた決断だったので。こういうこともあるんだな、という風に考えて、手術をしてけじめをつける、みたいなものもありました。それでもプロに行きたいというのはあったので、気持ちを整理して手術を決めました」
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