2016年12月打ち上げ「イプシロン」2号機とはどんなロケット?
20日夜に打ち上げられる固体燃料ロケット「イプシロン」2号機。イプシロンは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「宇宙への敷居を低くする」ことを目指して開発したロケットです。1号機は3年前に、今回と同じ鹿児島県肝付(きもつき)町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。イプシロンとはどんなロケットなのでしょうか。 【動画】「イプシロン」2号機 打ち上げの模様をライブ配信
1号機より打ち上げ能力を30%向上
イプシロンロケットの最大の特徴は、H2AやH2Bのような液体燃料ではなく、固体燃料を推進剤にしている点です。これにより、「機動性」と「低コスト」を実現しました。 イプシロンでは運用・設備・機体をコンパクト化しました。固体燃料ロケットは「花火のようなもの」だといいます。あらかじめロケットに燃料が入っていて、打ち上げ準備状況で待機が可能なので、即応性が高くなります。また、構造がシンプルで部品が少なく、小型化にも適していて開発費を安く、開発期間を短くできます。実際、イプシロン2号機の打ち上げ経費は総額で約50億円。H2Aなどと比べると半分程度の費用で済むといいます。 これまで宇宙利用ができなかった産業や人たちにも宇宙を身近なものにするのがイプシロンの狙いです。 いいいことずくめのようにも見えますが、液体燃料ロケットの利点もあります。打ち上げ直前に燃料を詰めるため、準備に時間と手間がかかる一方、ロケットの制御がしやすく、目的地に精度よく投入できる点や、固体燃料ロケットより重い荷物(ペイロード)を運ぶことができる点です。ちなみにロケットの大きさはH2Aの標準型が全長53メートルなのに対し、イプシロン2号機は全長26メートルと大きさも半分程度です。 1号機にあたる試験機は、2013年9月14日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。今回は強化型として開発・改良が進められ、2号機は、推進薬量を約10.7トンから約15トンに増量させるなど2段モータを大型化。打ち上げ能力を30%向上させました。より大きなサイズの衛星搭載が可能になり、搭載できる重さも450キロから590キロに増加しました。 今回の打ち上げに搭載されるのは、地球周辺の宇宙空間の放射線帯を観測するジオスペース探査衛星「ERG=エルグ」。観測結果は、宇宙嵐がどのように発達するのかなどの解明に生かされます。