iPhone、中国で5位圏内復活もHuaweiとの競争激化
中国の2024年7~9月期におけるスマートフォン市場で、米アップルのiPhoneが5位圏内に返り咲いた。新型「iPhone 16」の発売が奏功した。ただし、iPhoneの中国における出荷台数は前年同期からほぼ横ばい。これに対し競合の華為技術(Huawei、ファーウェイ)は2桁増。両社間の競争が激化している。 ■ アップル、2位に浮上も楽観視できず 米調査会社のIDCによると、7~9月期におけるiPhoneの中国市場シェアは15.6%で、前年同期から0.5ポイント低下した。順位は2位に浮上した。5年ぶりに5位圏外に転落した4~6月期からは回復したものの、安閑とはしていられない状況だ。出荷台数は前年同期から0.3%減少した。 一方、同四半期におけるファーウェイのシェアは3位の15.3%で、前年同期から4.2ポイント拡大した。同社の出荷台数は42%増えた。4四半期連続で2桁以上の伸びを記録しており、「目覚ましい復活を遂げている」(IDC)。 ■ ファーウェイの復活、アップルに圧力 ファーウェイはかつて、スマホ出荷台数で世界1位に浮上したこともあった。だが、19年に当時のトランプ米政権が同社を安全保障上の脅威とし、禁輸措置を講じた。同社は半導体など重要部品の供給制約を受けてスマホの生産が減少したほか、低価格スマホ事業HONOR(オナー)の売却を余儀なくされた。ファーウェイの中国におけるスマホシェアは20年半ばに29%あったが、2年後にわずか7%に低下した。
しかし、そうした中でも同社は半導体などの部品の中国国内開発を進めてきたとみられる。23年8月には、7ナノメートル(nm)技術で製造された半導体を採用し、5G(第5世代移動通信システム)相当の性能を持つ「Mate 60 Pro」を市場投入して消費者を引き付けた。同社はその後、三つ折りの折り畳み型スマホ「Mate XT」など、複数の新製品を市場投入している。 アップルにとって中国は3番目に大きな市場である。こうした状況は、同社に大きなプレッシャーを与えていると米CNBCは報じている。 ■ クックCEOの訪中、狙いはApple Intelligenceの導入か IDCによれば、中国におけるiPhone 16の初期の販売実績は前モデルと同水準だった。「アップルは、今後の販促策や人工知能(AI)機能の追加で需要を喚起できる」(IDC)という。 アップルの生成AIシステム「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」は送信メッセージを校正したり、絵文字を生成したり、長文メールの要約を作成したりする。音声アシスタント「Siri(シリ)」を介して、米オープンAIの対話型AI「Chat(チャット)GPT」による回答を得ることもできる。 しかし、中国では外国の生成AIが禁止されている。これによりアップルは現地のAI開発企業と連携する必要がある。アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は先ごろ中国を訪れ、同国政府との会合に臨んだ。 CNBCによれば、このとき同氏は政府高官やテクノロジー企業の幹部と会談した。これはApple Intelligenceの導入に向け、中国とのパートナーシップを強化するための試みだとみられている。Apple Intelligenceの中国展開が、この競争で重要なカギを握ると同社は考えているようだ。
小久保 重信