いま腸の病気が若者世代に急増している?「潰瘍性大腸炎」「クローン病」について医師に聞いた!
若い世代に増えている理由は食生活?
増田:潰瘍性大腸炎もクローン病も、原因不明ながらも食生活、腸内環境などとの関連が言われているということは、欧米化した食生活やライフスタイルの影響もあるということでしょうか? 小林先生:そうですね。関係があると言われています。食生活の影響は大きく、先行して欧米に多かったのですがファストフードなどの普及に従って日本国内でも増えている傾向はあります。 増田:10代後半から40代はファストフード世代で、欧米化したライフスタイルになった年代です。どんな症状を感じたら病院に行くべきでしょうか? 小林先生:サインは、「繰り返す腹痛と下痢、血便」などの症状です。これらが続いたら、病院を受診してください。消化器内科が専門ですが、近くになければ内科を受診されてもいいと思います。 受診して一度は「大丈夫」と言われても、まだ症状が続いていたらもう一度消化器専門医か大腸内視鏡の受けられる施設に行くことも考えてみてください。 増田:炎症性腸疾患(IBD)とわかったら、日常生活への影響はどの程度でしょうか? 妊娠・出産や仕事への影響はあるのでしょうか? 小林先生:症状があればいろいろな弊害がありますし、昔は、病気を寛解(安定した良い状態)までに持っていくことが難しかったのですが、今は医療の進歩によって多くの方が寛解まで持っていけるようになりました。きちんと治療し寛解を維持していれば、日常生活をほぼ通常通り過ごすことが可能です。 妊娠、出産に関しても寛解を維持できていれば、IBDのない健康な人とほぼ同じと考えて大丈夫です。一部、妊娠に影響のある薬はありますが、限定的ですので、医師に確認してください。 また、炎症性腸疾患(IBD)には、働く世代に患者さんが多くいます。就職から定年までIBDを抱えながら過ごす患者さんも少なくありません。でも、治療を継続できれば、患者さんは病気を抱えながら働き続けることも可能なので、職場の皆さんで治療を継続できる環境を整えていただくことが重要です。社会全体に理解していただきたい病気です。 北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センターセンター長・北里大学医学部消化器内科准教授 小林 拓(こばやしたく)先生 名古屋大学医学部、大学院医学系研究科卒業。医学博士。慶應義塾大学消化器内科助教、ノースカロライナ大学Postdoctoral Research Associate、北里大学北里研究所病院消化器内科部長ほかを経て現職。日本炎症性腸疾患学会専門医・指導医。日本消化器病学会専門医・指導医ほか。炎症性腸疾患の専門家。 参考資料/「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」日本消化器病学会 イラスト/大内郁美 取材・文/増田美加 企画・編集/福井小夜子(yoi)