他人の手帳をのぞき見。“SNSに載らない人生のリアル”を垣間見る「手帳類図書室」
顔も知らない他人の手帳や日記、メモを覗き見できる施設がある。その名も「手帳類図書室」。この図書室に行けば、誰でも、美味しかったご飯、仕事の愚痴、人間関係の悩み、恋愛のあれこれなど、見ず知らずの人のリアルに触れられる。 【全画像をみる】他人の手帳をのぞき見。“SNSに載らない人生のリアル”を垣間見る「手帳類図書室」
闘病記や新社会人、恋する高校生の手帳まで
東京都渋谷区の小田急線 参宮橋駅から徒歩5分、アートギャラリー・ピカレスクの一角に手帳類図書室はある。 全4席のこじんまりとした図書室の壁面には、日記や手帳が収められたボックスがずらりと並ぶ。 図書室のテーブルの上には目録が。この目録には、膨大な手帳類一つひとつに対し、著者の属性やざっくりとした内容の解説が記されている。来場者はまず目録を手に取り、読む手帳類を選ぶ。 中身をぱらぱらとめくると、難病に侵された若い女性の闘病記や、おそらく働き始めて間もないであろう社会人男性の手帳、学校の先生に恋する女子高生の日記などバラエティに富んだ手帳類が存在することが分かる。 例えば、元々の形が分からないくらい分厚くなった手帳の著者は、プロスノーボーダー兼詩人だ。 中身を見ると、手書きの文字がぎっしりと並ぶページがあったかと思えば、雑誌やポスターなどの切り抜きが貼られているページも。感情の爆発にともなった詩が印象的で「手帳ってこんな風に自由に使ってもいいのか」という発見に満ちた1冊だ。
プライベートな日記を読むというむず痒さ
手帳類図書室を訪れる人は、20~40代が多く、来場者の75パーセントが女性だという。1人で図書室に来てじっくりと読む人、友達同士など2~3人で訪れて語り合いながら楽しむ人、おおむね2パターンに分かれるそうだ。ここ2年は、来場者の一部にアンケートも取っている。アンケートには次のような感想が寄せられる。 「本当にユーモラスでつい笑ってしまいました。読んでいて肩の力が抜ける、手帳ってこういうのでもいいんだと思えるような1冊でした」 「大学生が大人の階段を登る瞬間を目の当たりにして、懐かしい気持ちと、プライベートな日記を読むというなんだか悪いことをしているようなむず痒さがありました」 「読んでいくうちに、筆者の人となりが分かっていく感じや、字体が変わったタイミングの心境の変化が興味深かった」 筆者も、いくつかの手帳類を読ませてもらったが、来場者たちの言うことがよく分かった。言葉選び、大きさも丁寧さも時によって変わる手書きの文字、手帳を書く頻度などから、それぞれの手帳の書き手の人柄や人生を自然と想像してしまう。