他人の手帳をのぞき見。“SNSに載らない人生のリアル”を垣間見る「手帳類図書室」
約1800冊の手帳を所蔵
運営するのは、手帳類収集家の志良堂正史(しらどう まさふみ)。なぜ手帳類を収集し、このような施設を作ったのだろうか。 図書室に保管されているのは400冊だが、志良堂はその3倍以上、1800冊ほどの手帳類を保持している。 手帳類を集め始めたのは2014年頃のことだ。ゲーム系のプログラマーとして仕事をしていた志良堂は、当時、フリーランスとして独立したばかり。ゲーム制作の仕事をしつつ、何か個人活動をしたいと考えていた。手軽にできる活動として、手帳のコレクションに目を付けた。「手帳に書かれた未完成・断片的なメモから、ゲームのアイデアが見つかれば……」。自身も手帳やメモ帳などを愛用していた志良堂は、そんな思惑から手帳を集めようと決めた。 思いついた勢いのまま、noteに手帳類募集の記事を掲載。すると、3週間ほど経った頃に、面識のない若者から連絡が来た。就職目前で、これまでの手帳を処分しようとしていたというのだ。直接会うこともなく、メールでやり取りをして、初めて他人のプライベートな手帳を受け取った。 しかしそれ以降、手帳集めは難航。志良堂は周りの友人・知人に声をかけ、直接交渉をして手帳を買い取ることにした。
日記を他人に預ける“動機”
手帳類の収集を始めてから約3年、地道な活動の末、志良堂のもとには約750冊の手帳類が集まった。 見ず知らずの人間に、パーソナルな手帳や日記を預けるとはなかなか勇気がいるように思える。寄贈者はどんな人たちなのだろうか。年齢は20~40代が多く、性別は女性が多いという。一体どんなモチベーションで他人に手帳を預けるのか。 「逆に聞きますが、あなたは過去の日記や手帳ってどうしていますか?読まれても大丈夫ですか?」 私の手帳は実家など、どこかにあると思うが、家族には読まれたくない。 「まさにそういう理由です。思い出が詰まっていて捨てるのは忍びない。けれど、保管をしておいて身近な人に読まれることには抵抗があると思う人が結構多いみたいです。 一方で、自分を知らない人に読まれることには抵抗がないようですね。タイミングとしては引っ越しや、実家を出るとき、結婚などの人生の転換期に、過去の手帳類を預けてくださる方が多いように感じます」 個人的な記録や思い出だからこそ、家族や知人・友人には見つからない場所、かつ大切に保管してもらえる場所に預けたいと思うのだろう。