あまりの恐怖に尋問中に「失神」…イラン人女性が明かす、3人の尋問官による「ヤバすぎる拷問」の実態とは
やる気に満ち溢れる若手尋問官
ロープのある部屋に連れて行かれ、自分がMI6のスパイである、そしてハタミとカルービと不適切な関係を持った、と告白しないのなら、死刑にすると言われた。 これは「はったり」だったが、私は恐怖で失神した。目が覚めると、朝のアザーンは終わっていた。私は尋問官たちを呪って、怒りと恐怖を吐き出した。自分がどこにいるのかも分からなかった。見たこともない場所。後にも先にも、あそこに連れて行かれたのは、あの1回限りだった。 ――尋問の最中、尋問官の振る舞いはどのようなものでしたか? 不運なことに、2009年当時の尋問は、入省したてで経験不足の、昇進に燃えた若手らが担当していた。彼らは私だけでなく、もっと長期間収容されている大物政治犯にも割り振られていた。私は自分の尋問官を「インターン(見習い)」と呼んだ。彼には自分の意志というものがなかった。 釈放されたあと、尋問チームの責任者が誰だったのかが分かった。40日間、家族と全く連絡が取れなかった末にやっと電話ができることになり、廊下を歩いていたときに目隠しの下から見た。扉の近くに立っていたその男の声に、聞き覚えがあった。初日に聞いた、イスファハン訛りの男だ。尋問にもときどき現れた。 とはいえ私の尋問の大部分はインターンがおこなった。もうひとりの尋問官は、諜報治安省の防諜チーム(敵のスパイ活動を取り締まる)の人物で、このふたりに25日間尋問された。尋問は朝の5時から夜の10時まで続く。メインの尋問官はアミール・ホセイン・アスガリという名で、仲間内では「マフダヴィ」と呼ばれていた。この男はひどい態度で、卑猥で下品な言葉を使う。一方、インターンのほうは「良い警官」の役割で、私にきちんと質問をしてきた。
尋問官によるハニートラップ
しばらくして、「ドクター」と呼ばれる人物が尋問に加わったことがあった。この人物は、私に恋をしてしまったという演技をしていた。あるとき、ドクターは241棟の尋問室に私を呼び出したものの、尋問をしないことがあった。代わりに、その隣の部屋で同室のミズ・Fを尋問した。 ドクターは彼女をしつこく性的に侮辱した。お前の胸はいくらするんだ、と5000トマン紙幣を彼女の胸に置いたりするのだ。私たちは、もしドクターがこのような行為を繰り返すなら、彼女が吐きそうな振りをして、隣の私に助けを求める作戦を練った。私と彼女以外に女性はおらず、まわりは男性だけだったから。 ある日、ドクターは私の独房に来て「愛してる」と書いた紙を見せてきた。そして唐突に私の頭を撫でたのだ。あなたは「マフラム(家族や血縁関係の親族)」ではないのだから私の頭に触れる権利はない(イスラムでは頭は神聖なものとされており、男女が接しない文化であるためかなり不謹慎な行為となる)、と抗議したが、彼は私のチャドルや目隠しが、私の頭と彼の手の間のバリアになっているから問題ない、というような屁理屈を言った。 釈放されるとき、彼はエヴィーン刑務所の前に車を停めてこちらを見ていた。私にプロポーズして、もし結婚するなら私の訴訟に片をつけても良いとも言ってきた。 ――その「ドクター」はあなたの釈放後、連絡を取ってきましたか? 一度電話をしてきて、スーツケースに入れている私の裁判資料を返したいと言うので、会った。「結婚について考えが変わったか?」と聞かれた。 私は「自分に科された刑に喜んで服す。あなたには二度と会いたくない」と答えた。 翻訳:星薫子 『不当な拘禁に「8日間の絶食」で抗議…言論弾圧を続けるイラン政府に立ち向かった女性の「自由への闘い」』へ続く
ナルゲス・モハンマディ(イラン・イスラム共和国の人権活動家・ノーベル平和賞受賞者)