八王子に出現した19歳の“倒し屋”…佐々木尽が2度ダウン劣勢からの大逆転KOでユース王座防衛…次は平岡アンディと日本王座争う
プロボクシングの日本ユース・スーパーライト級タイトルマッチが17日、八王子市の八王子富士森体育館で行われ、王者の佐々木尽(19、八王子中屋)が日本ユース・ライト級王者の湯場海樹(22、ワタナベ)を2回2分3秒に左フックの一撃で逆転KO勝利しタイトルを防衛した。佐々木は、この試合まで10勝9KOのハードパンチャーで湯場は元日本5階級制覇王者、湯場忠志氏を父に持つサラブレッド。注目の無敗のホープ対決は壮絶な倒し合いとなった。佐々木は10月19日に後楽園でIBF世界同級8位、日本同級1位の平岡アンディ(24、大橋)と日本スーパーライト級王座決定戦を戦う。
「パンチが見えなかった」
この19歳…タダモノではない。 絶体絶命のピンチ。 「ノーモーションで見えなかった。気づいたら勝手に体が倒れていた」 1ラウンド。姿勢を低くした佐々木がパンチを打つアクションに入ろうとしたまさにその刹那。サウスポースタイルの湯場がインサイドから鋭く放った左のショートカウンターを食らい、プロ初のダウンを味わった。「緊張していた」。動きが硬く、なおさらパンチが効いた。それでも「今まで味わったことのない硬いパンチを初めて味わいダウンも経験して楽しかった。面白いなと思った」と言うのである。 2ラウンドには、正面に立ち動きを止めたところに、また左ストレートを被弾。お尻からキャンバスに落ちた。 「効いていたと思う。足がふわっときたけど、思ったより早くレフェリーのカウント9くらいで回復した。階段ダッシュをしてきたおかげかも」 立ち上がったが、コーナーに詰められ湯場の猛ラッシュを許す。 「全部パンチは見えていた。ガードしていたので大丈夫」と佐々木は振り返るが、八王子中屋ジムの中屋一生会長の父で先代会長でもある中屋廣隆チーフトレーナーが、「レフェリーに止められる可能性もあった」という状況に追い込まれていた。 だが、佐々木の目は死んではいなかった。 「気持ちはきれていなかった。集中していた。まだ8ラウンドあるんで焦りもない。絶対に勝つ、絶対に倒す。その気持ちはずっとあった」 仕留めにきた湯場のパンチの打ち終わりに合わせて右から電光石火の左フック。ダウンした湯場は立ち上がったが、よろけてロープにもたれかかり、それを見たレフェリーのマーチンがKO負けを宣告した。大振りのパンチをステップワークで外され、2度のダウンを喫して、湯場が優勢に運んでいた試合をたった一発でひっくり返した。近年、稀に見る壮絶な大逆転勝利である。 佐々木はコーナーによじのぼり、声出しが禁じられている八王子冨士森体育館は、拍手と熱狂に包まれた。八王子に拠点を構える八王子中屋ジムのお膝もと。しかも、佐々木は体育館から歩いて2、3分のところにある八王子拓真高の定時制に通っていた。 「めっちゃ嬉しかった。次はダウンしないようにしないと」 元日本5階級制覇王者の父を持ちインターハイ準Vなどのアマチュア戦績を持って6回戦のB級ライセンスからスタートし8戦目でユースライト級王座を獲得した湯場と2018年に高校生でプロデビューして以来、10勝9KOできた屈指のハードパンチャー、佐々木との注目のホープ対決は、衝撃の結末となった。